演奏で実践してみる
この下のコード進行でCメジャー・スケールを弾いたとします。
| C | | Am | | Dm | | G7 |
| Fmaj7 | | Em | | Dm7 | | Dm7/G |
3小節目のDmのところですが、普通はずっとCメジャー・スケールを弾いているつもりでしょう。でもそのコードの主音であるDから見ると、Dドリアンに見えてきますね。なんせどちらも同じ音列なんだから、視点をどこにするかで名前が変わるだけのことです。Fmaj7の上ではFリディアン、最後のDm7/GではGミクソリディアンに見えます。
結局は全部Cメジャー・スケールです。
というところで、こんなコード進行ではどうでしょう。
| Am7 | | | | | | |
| Dm7 | | | | | | |
上の段ではAm7が続きます。下の段ではDm7。
両方Cメジャーのキーに登場するコードなので、Cメジャー・スケール(Aマイナー・スケールという方が正しいでしょうが)一発で進めても問題ないです。その場合…
Am7ではAエオリアン
Dm7ではDドリアン
を弾いてることと同じになります。どちらもCメジャー・スケールと同じです。
ここで、解釈をがらっと変えて、逆転させてみます。
Am7でAドリアン
Dm7でDエオリアン
を弾くとどうなるでしょう。
前回の最後の方で述べてますが、ドリアンもエオリアンもマイナーの仲間なので、m7というコードに載せる限り、合います。(ロクリアンだけは合いませんが)
Aドリアンということは、Gメジャー・スケール(Gメジャーの二つ目、Aからスタートした音列)
Dエオリアンということは、Fメジャー・スケール(Dエオリアン=Dマイナー。Fメジャーの6つ目、Dからスタート)
ということで、Am7の上でGメジャー・スケールを弾き、Dm7の上でFメジャー・スケールを弾くと、Aドリアン、Dエオリアンを弾いていることになります。厳密に言うと、転調しているわけです。実際にはしているというより、弾き手の解釈により、”させている”という方が正確です。
m7コードであれば、ドリアン、エオリアン、フリジアンの3つが選択肢に入ってくるので、Am7とDm7…2つのm7コードをどう捉えるのか、それがモード奏法のやり方であり、醍醐味でもあります。フリジアン×2などという凄まじい響きでも、本人や聴き手が良しとすればありです。
最後に、メジャーを見ておきましょう。
| Fmaj7 | | | | | | |
| Bbmaj7 | | | | | | |
どちらもキーFメジャーに登場するコードなので、Fメジャー・スケールを弾き続けると、スムーズにはまります。この場合、Fアイオニアン→Bbリディアン と弾いているということができます。実態はもちろん単なるFメジャー・スケールの一発。
両方をリディアンで弾くと
Fリディアン(Cメジャーの第4音)
Bbリディアン(Fメジャーの第4音)
となり、キーが途中で変わっているような、少し宙に浮いた雰囲気のソロを取ることができます。
という風に、教会旋法をつかったモード奏法が生きるのは、コード進行がしっかりと作られていない、ワンコードやツーコードぐらいの時に限られます。
もともとマイルス・ディヴィスが既存のコード進行に縛られるのを嫌って生み出した方法論なので、はっきりとしたコード進行が想定されていないのは当然といえば当然です。MilestoneやSo Whatといった、マイルスがモード奏法のために書き残したナンバーは、いずれもコード進行自体がほとんど存在しません。
モード奏法はジャズ・ロックの世界ではかなり広めに喧伝されてるやり方ですが、実際に操るのはかなり難しいです。ギタリストと相性が一番いいと思われるドリアン・モードを利用したモード奏法の講座を、「ギターアドリブ講座」で展開してますので、興味がある方は覗いていってみてください。
教会旋律の説明有難うございます。シニアのテナーサックス吹きです。
現在インプロビゼーションの勉強中です。
今まで見たサイト、読んだ本の中で教会旋律についてはこのサイトの説明が一番分かり易かったです。
特に「Am7の上でGメジャー・スケールを弾き、Dm7の上でFメジャー・スケールを弾くと、Aドリアン、Dエオリアンを弾いていることになります。厳密に言うと、転調しているわけです。」
この部分が私にとって非常に重要な部分でした。やっと頭の中がすっきりした感じです。
本当に感謝しています。
遅ればせながら、コメントありがとうございます。
サックス奏者の方からコメント頂けるとは思ってもいませんでした。
教会旋法は概念は単純なんですが、理解するまではつまらないところがよく分からなかったりして、
理解とサウンドを感じるのに(ここが重要ですが)時間が掛かりますね。
御役に立てて幸いです。