理論講座<コード編2>コードと度数(2)~sus4、add9、6thそしてdimとaug

ここまでは7thの付いた4和音を中心に解説しました。ここからはそこから漏れたコードについて扱います。

sus4、7sus4の構成音

まずsus4ですが、正確にはsuspended 4thと言います。サスペンデッドは引き上げると言う程度の意味で、これは4度に引き上げる、を意味しますが、何を引きずり上げて4度にするのかというと、3度しかありません。Root – M3 – P5 のふつうのメジャーコードの3度を半音上げて、Root – P4 – P5 にするとsus4のできあがりです。7sus4は7thコードの3度を同じように上げて作ります。

M3rdから半音上がった部分がP4th(完全4度)となる

Csus4

C7sus4

メジャー、マイナーを判別する3度の音が消えるので、このコードの響きにはメジャー、マイナー感がありません。暗くも明るくもきこえないというか、明るい曲の中では明るくも聞こえるし、暗い曲の中では暗く聞こえる、なんとも現金な響きがします。

コードフォームでの度数

どちらもよく使われるフォームです。通常のメジャーコードやセブンスコードとセットで、どこを動かせばsus4になるかを覚えておくと良いですね。

7sus4については通常のセブンスコードの代わりに使われることもありますが、その例は多くなく、sus4系は大体が「○7sus4→○7」みたいな進行になります。このへん経験でわかる人も多いんじゃないでしょうか。sus4が単体で使われた例で、最も劇的なのはビートルズ「Hard Day’s Night」のイントロでしょう。

add9(アッド9)

アコギでの使用頻度が異常に高いadd9。透明感溢れる響きは、ギターという楽器の真骨頂を感じさせます。

add9の構成音

注)add9の代わりに()カッコが使われることがあります。”C(9)”と”Cadd9″は同じですが、カッコのない”C9″は別のコードです。

addは加えるという意味で、add9は普通のメジャーコードにM9thを足したものを指します。

度数は8でひとまわりして、8度は1度と同じ音程のオクターブ違い。ゆえに9thは2ndと同じです。結局、M9thを足すのはM2ndを足すのと同じになり、これはルートの1音上。9thはそれぞれ、Cならば”レ”、Dなら”ミ”、Eならば”ファ#”の音がプラスされることになります。

3度の音を半音落とすと、マイナーコードに9thが付加されるという意味で「●madd9」という名になります。余り使われませんが、透き通った暗さが魅力なコードです。

コードフォームでの度数

一応バレーコードでの度数を載せてはいますが、どちらかというとオープンコードで使われることが多いコードです。バレーコードの6弦ルートは高いところに9thの音が浮いて聞こえるので、あまり綺麗に響きません。

add9の5弦ルートフォームは3度の音が抜けています。フォーム的に9thを入れるために3度を犠牲にせざるを得ないわけです。

オープンコードで押さえるAadd9、Dadd9にも3度の音がなく、正確に3rdを省略していますという意味で、Aadd9(omit 3rd)などと稀に書かれることもあります。3度がないので、厳密に言うとメジャーかマイナーの区別が付かない音になってしまっているのですが、それも含めてアコースティックギターらしい響きだとして、広く受け入れられています。

madd9はメジャーのadd9とは比較にならないほど使用頻度が少ないコード。6弦ルートでは押さえられますが、5弦ルートで押さえるのは至難です。ローポジションではほぼ不可能ですが、開放弦を利用したきれいなフォームが作れる場合もあります。(下記参照)

オープンコードのadd9

アコースティックギターで頻出するadd9コードですが、オープンコードで使われることがとても多いです。

3度のないAadd9やDadd9は出てくることが一番多く、Cadd9がそれに続きます。軽くストロークするだけで「これぞアコギ」といった爽やかな響きが得られるのが魅力です。

特殊な形のadd9

Dadd9やAadd9は9thの音が開放弦の1,2弦という、非常に鳴らしやすく煌びやかなところにあるため、それを利用した特殊なフォームが作れます。

6thコード

6thも頻度としてはそれなりに見る機会がありますね。柔らかい音が特徴です。

6thコードの構成音

6thコード自体はM6th(長6度)の音を普通のメジャーコードかマイナーコードに追加したもの。M6を足すことにより”6”という表記が付け足されるのですが、「M7を足して●M7、m7を足して●7」とする7thコードと反対なので注意。ちなみにm6th(短6度)をコードに足すことはなく、5度が変化して#5thとなる場合が普通です。

コードフォームでの度数

普通のマイナーやら7thやらのバレーコードに比べると、M6thは押さえにくい場所にあるため、このような妙な形になります。5度などは押さえる際に削られることが多いのでカッコ表記していますが、ルートを削ることもあります。

6thの音はダイアトニック・スケール上にあり、6thコードはM7の代わりとしてしばしば使われるため、6thをダイアトニック・コードの一味として扱うこともあります。
M7やM7(9)がある場所にそれに代えて6や6(9)を使うと、M7の持つ浮遊感の代わりに、南国系の柔らかな響きが得られます。そのためか、ハワイアンやボサノヴァなどの南国系の音楽において、ラストのコードとして使われたりします。

dimとaugコード

dim(ディミニッシュ)は本名をdiminished 7thといい、イングヴェイがコードトーンをスウィープで弾きまくるので、ハードロック系の人にもすっかり馴染み深くなりました。ジャズやボサノヴァでは7thの代わりになったり、ふたつのコードを円滑につなげたり(パッシング・ディミニッシュ)、色んな役割を果たします。

aug(オーギュメント)はそれに比べるとかなり登場頻度は低いです。メジャーコードと6thコードの間に挟まって、半音上昇のクリシェ進行を構成したり、ドミナント7thの代わりとなって登場したりすることがたまにあります。

ディミニッシュ・コード

いままで見たどのコードよりもへんてこな構成音です。構成音から判別して無理やり名づけると○m6-5というのが近いでしょうか…。しかし、ディミニッシュ・コードには今までのコードには見られない、独特な特徴があります。

ディミニッシュの歯車

こちらは筆者考案のディミニッシュの歯車。色分けされている音同士がディミニッシュの構成音です。つまり、ディミニッシュ・コードは1オクターブ内の12音を均等に四分割した音の集まりです!

同じ色で結びついた4つの音はそれぞれ1音半の間隔をもって均等に並んでいます。ギターで言うと3フレット分ですね。ディミニッシュコードは全部で3つしか存在しないのです。

Cをルートにすると、「m3がD#、b5がF#、M6がA」になり、D#をルートにすると「m3がF#、b5がA、M6がC」となり、いずれも構成音は全く同じ。一応曲中ではベースが鳴らしている音をルートと見なしますが、このように構成音を律儀に書く意味はあまりありません。

オーギュメント・コード

ディミニッシュに比べると明快です。メジャーコードの5度が半音上がったものです。しかし、さっきのdimと同じような下の図をみてください。

オーギュメントの歯車

こちらも筆者考案のオーギュメント歯車。オーギュメント・コードは1オクターブ内の12音を均等に3分割した音の集まりです。色分けされた構成音どうしは2音の間隔をもって並んでいます。4和音であるディミニッシュと違い3和音になるので、1オクターブに4つのコードが存在します。

ところで、ディミニッシュに比べてもさらに使いどころの難しいオーギュメント・コードですが、一番多いパターンとして、A – Aaug – A6 などというように、メジャーと6thコードの間に挟んでスムーズなクリシェの響きを作ったりします。

コードフォーム

ディミニッシュは基本的にはこのフォームのどこをルートに持ってきてもいいのですが、低音をルートにする方が明らかにわかりやすいので、5弦ルート、6弦ルートと分けて表記しました。また、よく使われる4弦ルートフォームも一緒に記載しています。

ディミニッシュコードは1音半間隔(3フレット間隔)ならばいくらずらしても同じコードになるので、5フレットで作ったdimは8フレットで弾いても同じコードになります。この方法での演奏は特に4弦ルートフォームでよく行われます。

7thコードとディミニッシュとの関係

普通の7thコードのルートだけを半音上げると、半音上のdimコードを作ることができます。上がっているのがルートなので、他の構成音も完全に変わってしまいややこしいですが、●7のルートだけ半音上げて●#dimと覚えておくと、何かと便利です。

さらにディミニッシュ・コードは●7(-9)のルートが省略された形と見る向きもあります。こちらはこのあとのテンション・コードの項目でも少し突っ込んでいます。