ビートルズ、オリジナルアルバムに見るモノラル、ステレオの変遷

By | 2013年7月2日

ビートルズのリマスター盤が登場して、4年が経とうとしていますが、このリマスター盤発売の折、モノ・ボックスというのが限定版で同時に発売され、少し話題になりました。

結局予約販売が売り切れるやいなや、EMIは手のひらを返したように、急に増産を決め込んでバカバカと刷りまくり、おおいにファンの顰蹙を買ったんですが、そもそも21世紀も既に10年。
このステレオ主流の時代にモノラルを出す意義がどこにあったのか。

オリジナル・モノラル版発売の意図

当時は1960年代ですが、音楽を聴く環境としてはモノラルが主流でした。ステレオは一部のマニアが限定的に聴いているに過ぎず、作り手の側としても当然モノラル盤に力を入れます。大多数のリスナーはそっちで聴くのだから当然です。

モノラルのミックスに十分時間を掛けて、完成させた後、ステレオのミックスも一応作ります。これはまさに”一応”というに相応しいもので、エンジニアに丸投げ、なんてことも珍しくなかったようです。

 

初期の3枚ぐらいはその力の入れて無さが顕著で、たとえば1stアルバムタイトルトラック「Please Please Me」では、ジョンが歌詞を間違えて、笑いながら歌っているテイクが採用されていたり、3rdアルバム収録「If I Fell」では出だしのダブルボーカルがひどくずれていたりします。

リマスターされる前の旧CDは4th「For Sale」までをモノラルでまとめてありましたが、これは今でも僕は正しい選択だったと思ってます。

後期に入っても、ギターソロが抜け落ちている(I’m Only Sleeping)とか、モノとステレオで回転数が違う=ピッチが違う(She’s Leaving Home、Lucy in the Sky with Diamonds等)とかもザラであり、とにかくいい加減極まりないミックスがなされていたようです。ここまで違いがあると、名盤Sgt.Pepper’s〜はモノラルで聴いてこそ価値がある、とマニアが吹聴するのもあながち的外れではないということです。まぁ、さすがにレコード至上主義者の論理は聞いてて辟易するものがありますが…。

実際の音源にみるステレオの定位

ところで、アナログレコードのステレオ録音黎明期でもある、ビートルズの音源を時代順に聴いていくと、面白いほど定位が安定してません。コーラスとボーカルだけ片方に寄って、ドラムがもう片方に寄っているなんてのは初期によく見られます。ステレオの概念自体がはっきりしていないので、試行錯誤しながら定位を決めてたみたいですね。

 

ボーカル、コーラスが全部Rチャンネル、その他楽器がLチャンネル
・Please Please Me(1st)
・With The Beatles(2nd)

ボーカル、コーラスがセンター、ドラムを含むほとんどの楽器がLチャンネル
・A Hard Day’s Night(3rd)
・For Sale(4th)
・Rubber Soul(6th)
・Revolver(7th)
・Magical Mystery Tour(9th)
※曲による。ベースとドラムがLR分離。
・Abbey Road(12th)
※ドラム若干Rにも聞こえる。

ボーカル、コーラス、一部楽器がRチャンネル、ドラム含むその他楽器がLチャンネル
・We Can Work It Out/Day Tripper(11thシングル)

ボーカル、スネア、ベースドラム、ベース等センターで、現代に近いミックス
・Help!(5th)
・Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band(8th)
※ドラム、ベースやや右寄り。ボーカル左寄り。
・Let It Be(13th)

曲によってばらばら
・The Beatles”ホワイトアルバム” (10th)

全アルバム通して、ほとんどがLチャンネルにドラムを固定しています。これは当時としては普通のことだったのか、他アーティストの音源でも同時代のものでは良く聴ける定位です。現在ではイヤホンやヘッドホンで聴く人の方が多いぐらいなので、初期の、ボーカルが右に寄っているのははっきり言って気持ち悪いです。

ドラムとベースは基本セットで動かしているようなので、ドラムがLならベースもLの場合が多いですが、そうじゃないのも後期にはたまに見られます。

Help!に関して言えば、前回のCD化の際にミックスをやり直したらしいので、現代的なミックスになっているのもうなずけます。Sgt.Peppers〜はドラムが右寄り、ボーカル左寄り。ドラムと歌が被るのを極力避けようとした形跡が見られます。Let it beはプロデューサーが違うのもあってか、わりときれいにセンター。

興味深いのはホワイトアルバムで、曲によって全く違います。バンド内が一番ばらばらになっていた頃だけに、ミックスもてんでばらばらに行ったということかもしれません。

 

まとめ

この頃の音源を聴いてると、スネア、ベースドラム、ベース、ボーカルをセンターに持ってくるという決まりに縛られているのがアホらしくなってきます。aikoの「Power of Love」みたいに意図的に懐古的なミックスをしてるのもありますが、正直もうちょっと奔放にやった方が、面白い音空間が作れるんじゃないか、と思えてなりません。


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