Andy Timmons(アンディ・ティモンズ)「Electric Gypsy」の弾き方を解析する

アンディ・ティモンズの1stアルバム収録の「Electric Gypsy(エレクトリックジプシー)」は、エレキギターの魅力が凝縮されたイントロリフの存在感もあって、今でも彼の代表曲となってます。

昔ストラトを中古で新しく買ったときに、練習して弾いた動画があるのですが、それを添付して少し解析を進めてみます。

古いもの故の画質の悪さは勘弁を。フェンダーとmomoseの合体ストラト → Exotic ATモデルBBPreamp → fenderアンプ というのをコンデンサマイクで集音、というセッティングだったと記憶してます。

原曲は半音下げですが、今回はレギュラーチューニング。最近はライブでも本人レギュラーで弾いてるし、まあいいじゃないかということで。

というわけでエレクトリックジプシー風の譜面を用意して解析をはじめてみます。大体曲通して網羅してるんですが、ところどころ飛ばしてます。フルの譜面はここをみてください。

 

イントロ

イントロ部分
イントロ部分

この曲の顔とも言えるイントロのリフ。リズムを完璧にするためにも、ピッキングは規則正しい16ビート・オルタネイトが必須でしょう。出だしの1拍目はダウン→ダウン→アップ。8分音符が繋がっている箇所は原則ダウン→ダウンのピッキング。実際にピッキング記号を併記すると、ほとんどがダウン・ピッキングになりました。ちなみに、上の動画でもそうなってると思ってましたが、2小節目後半はちょっと違いますね(笑)

ヤングギター誌2014年6月号の付録DVDに本人が弾いてるのがありましたが、確か完璧なオルタネイトだったと思います。

で、何より重要なのが強弱

原曲を聴くと、2小節目の前半辺りは消え入るような弱さで弾いており、2段目のBmコードの辺りから急激にアタッキーなピッキングをしてます。4小節目のGコードの部分は再び弱くなってます。この辺は原曲をよく聴いてニュアンスを掴めるまで練習すると、アーティキュレーションが身について良いんじゃないでしょうか。

参考までに赤字でクレッシェンドとアクセントを表記してみました。ここを急激に強くするだけで、随分と良い感じになります。

ライブでは結構この辺いい加減ですが、原曲は相当繊細にコントロールしているのがよく分かりますね。この曲の魅力の半分ぐらいはここにあるんじゃなかろうかと。この辺りの強弱の柔軟な付け方、歌わせ方はまさに匠の技を感じさせます。ノイズゲートはこういう表現のときに音がぶつぶつ途切れるので、僕は掛けない主義です。

ちなみに、ここを弾くときはギターのボリュームを半分ぐらいにしてます。Super 70’sの途中のBメロと同じですが、多分似たような感じで本人もやってるんじゃないでしょうか。

 

Aメロ

Aメロ部分。タッピング・ハーモニクスで弾かれている。
Aメロ部分。タッピング・ハーモニクスで弾かれている。

そのまま弾くのではなく、その1オクターブ上を右手で叩いて音を出します。昔々エディ・ヴァン・ヘイレンがやっていたタッピング・ハーモニクスという技。

この静かなドラムとベースだけの空間に不思議とこのサウンドがマッチしてます。慣れるまでは随分と小難しい技ですが、指先で指板の上を跳ねさせるように弾くと、結構綺麗に鳴ります。と思ったら上の動画、鳴ってない場所があったりなかったり。

ここもボリュームは半分ぐらいのままにしてます。やや深めのオーバードライブを掛けて、ストラトみたいなシングルコイルのギターでネック側のPUを使い、ボリュームを若干絞ると、原曲に近い感じのニュアンスが出ます。本人がどう音色をコントロールして弾いてるかまでは未確認ですが、近いんじゃないかと思います。

 

Interludeリフ

レイヴォーン風?の16分リフ
レイヴォーン風?の16分リフ

上記のAメロの次に繋がる部分。レイヴォーン風にも聞こえますが、ここからギターのボリュームはMAXに。右手は完全オルタネイトが必須。ここはこの曲の中でもロックを感じさせる部分だけに思い切って振り抜くべきですが、これまた16分で振るとほとんどダウンピッキングのようです。

左手は不要な音が出ないように、必要外の音を全てミュートし、右手は周辺の弦も含めて一気に弾く。単音カッティングに近いテクニックですね。2小節目にある5fのセーハなんかは、人差し指をそらして押さえて、1弦をミュート。親指をネック上から出して6弦をミュート。5弦は親指をさらに下まで落とすか、人差し指先でミュート。2弦は譜面には無いように見えますが、恐らく弾いてると思います。

eg-fing

かなりよく使う手法なので、やったことのない方はこれを機会に練習しておくといいかと。

ちなみに、上に書いたYG誌のDVDに、右手の使い方をアンディ自身が解説してる一コマがありますが、一度見てみる価値があります。別にYG誌の回し者なんかじゃないですよ(笑)

 

ソロ前半

ソロ前半。静かに弾いてるところ。
ソロ前半。静かに弾いてるところ。

ソロ前半は再びギターのボリュームを絞り、繊細なピッキングを心がけます。とかく強弱がしっかりと付いているので、そこを真似るのが最大の難所。これを練習するのがギターを歌わせる一番の近道。だけどむずい。

適当にアドリブしてるように見えて、ほぼ完全にリズムに乗って弾いている感じなので、所々に挟まる3連符を完璧に3連で弾くと、非常に近い雰囲気になります。こういう部分、単なるタメではない正確さがある様に思えます。

フレーズ内容は、本人が言うには「コードの3度を意識したインプロ」という具合ですが、それはライブやクリニックで最近弾いてる場合の話で、この曲がレコーディングされた当時はどんなもんだったんでしょうね。完全なる3度狙いではないですが、部分的にコードトーンを取り入れてるのは見て取れます。前半3小節はメジャースケール中心、Gコードの所での6弦3フレットの連打は、明らかにコードを意識してる感じがします。

その後はペンタトニック的アプローチで、F#7の部分になって特徴的なコードトーンが登場して、Bmへ向かう。この辺りは「F#7→Bm」というドミナント進行をソロ時の際にだけ挿入してるためか、妙にジャズっぽい響きに感じます。別にコードの3度と5度を弾いてるだけなんですが、かっこよく聞こえるのはまさにそのセンスの為せる技でしょうか。

最下段のGコード、Aコードの辺りは完全にコードトーン。オープンコード”D”のフォームを使った4弦ルートの形ですね。

 

ソロ後半

ソロ後半部分のさらに最後の辺り。
ソロ後半部分のさらに最後の辺り。

ソロの後半からはブースターを踏んでるような音の変わりようなので、BB Preとかを使うならここで踏むのがいいかも。僕は最初から踏んでるので、ギターのボリュームを上げてるだけですが。

この譜面はソロのラスト辺りです。1段目右側の3連符の連続は、前半部分にもある正確な3連ですが、気持ちねちっこく弾くと雰囲気が出ていいと思います。

最後の部分はイントロリフに戻るために少し変わったコードが付けられており、最後の2小節はF#7→A#dim→Edimという流れ。A#dim = Edim = F#7(-9) なので、実質全部F#7なんですが、ソロ最後のかっこいいディミニッシュ下降フレーズの存在があるので、バックのコードもディミニッシュと書くのが正しいかと。

ここは明らかに決めソロだと思います。にしても、このハマり様は凄いの一言。”あの”メロディックなリフに戻るためのお膳立てとして、これ以上ないハマり具合を見せてますね。

 

最後の速弾き

eg07

エンディング付近にある速弾きフレーズ。2小節目とか明らかに手癖だと思うんですが、リズムが完璧なので、まるで最初からそこにあったかのようなソロに聞こえます。

リズム譜は参考程度に、原曲と合わせて掴んでいくのが正しいと思いますが、その際、足で4拍子のリズムを踏んでおけると完璧。これがまさにアンディ自身の言っていたことにも繋がります。が、この速いパッセージを弾きながらはかなり難しいです。

最後の4音ひとかたまりの下降ラインも他の曲によく登場するので、多分手癖でしょうか。このアプローチは見た目よりかんたんでリズムも取りやすく、アドリブに入れやすいので、パクっておくといいかもしれません。かくいう僕もかなり使わせてもらってるアプローチです。

 

というわけで、適当に解析してみましたが、ポイントは”強弱”と”右手の一定の動きによって生まれるグルーヴ”と言ったところ。

個人的にアンディ・ティモンズは一番好きなギタリストで、ギターのオーダーをする際に「こういう音が出したい」と言って、リファレンスCDにして持って行ったほどです。

「All is Forgiven」とか「Super 70’s」とか、他にも何曲かコピーした曲がありますが、曲自体が良く出来ているだけではなくて、いくらコピーしても音をなぞるだけでは絶対に近づけない奥の深さがあって、面白いですね。