セッション定番曲「The Chicken(チキン)」を弾いて解析する

ジャコ・パストリアスのプレイで有名なこの曲。セッションではたいがい誰かがやりたがり、聴かない日はないといった具合。特にベーシストは皆大好き。

あまりの頻度に個人的には辟易するときもありますが、苦手な一曲でもあるので、あえて練習も兼ねて撮ってみることに。今年最後の動画になりました。

コード進行

| Bb7 | | |
| Bb7 | | |
| Eb7 | | D7 | G7
| C7 | | |N.C.

シンプルそうで難しい進行です。最後の小節は総ユニゾンなので一応NC扱いですが、音列的にも明らかにBb7でしょう。

 

動画

下で解説していますが、D7やG7に凝った音列を入れて、十分に歪んだ音というのもあって、ややフュージョンテイストで弾いています。モロにブルースの人もいるでしょうし、ジャズに寄り倒している人も。プレイヤーの色がモロに出せる曲です。

 

ざっくり解析

動画で弾いているソロを題材にして、アプローチの仕方をチェックしてみます。譜面も部分ですが付けています。参考にどうぞ!

Bb7 – Eb7

1段目は実質イントロ。ソロの際にはBb7がずいぶん長く続くことになります。Eb7まではBbのブルースとして弾くのが良いかなと、動画でもそうしてますが、Eb7の時にEbのメジャーペンタに行っている時もあります。

1:25〜

この部分は2週目の前半。ただのペンタトニックなんですが、符割りが16分3連のお陰でちょっとスリリング。個人的な手癖ですね。

 

D7 – G7

このD7とG7がくせ者。こいつらのせいでこの曲の難易度は格段に上がってます。理論派を目指すなら凝りたいところですが、コードに合わせずにBbブルースで強引に押し切ることも可能です。僕自身の演奏はけっこう凝ったことやってます。

コードに合わすのであれば、D7はIII7に当たるので、オルタード系。Dオルタードや、ハーモニックマイナーP5th↓(Gハーモニックマイナー)など。G7はVI7。ミクソリディアン系やGブルースで解釈、あるいはオルタード系でも可。

0:57〜
1週目。Dのハーモニック・マイナーP5↓を利用。スケールで言うと恐ろしく難しい名前ですが、

Gマイナー・スケール → D7に対応させるためにファをファ#(D7のM3rd)に → Gハーモニック・マイナーになっちゃった

という流れですね。

理論的に書くと上のようになりますが、僕が弾いているフレーズはどちらかというとビバップの借り物に近いので、ジャズ的な響きがします。

 

1:32〜
2週目の同じ場所。D7はオルタードを使用。こちらもほとんどビバップのフレーズです。ポイントはC7の部分で、C7のコードトーンをそのまま弾いています。ド-ミ-ソ-シb-ド-ミ-ソ-シb って感じですね…。最後は6度音程のブルース調のフレーズで締め。

2つとも、ほぼD7はコードに合わせてオルタード系を使用して、7th感を強く打ち出しています。あまり難しいスケールを考えたくないって場合は、とりあえずBbマイナーペンタを弾きながら各コードの3度の音を入れておけばそれっぽく聞こえるので、そういう単純なやり方でもありかなと。

 

C7

最後のC7は結構長いので、Cのブルースと解釈してペンタトニックなどで攻めるも良し、ミクソリディアンを弾くも良し。やや難しくなりますが、II7でよく使われるリディアンb7thなどもいいですね。人によってホールトーンなどを弾く人もいます。上にあった譜面ではコードトーンをそのまま弾いているわけですが、これはあまり見ませんね(笑)

1:04〜
1週目のC7部分。

ここではCのメジャーペンタトニックを使用。ギタリスト的には一番楽な選択ではないでしょうか。

最後のユニゾン部分は、アドリブ中でもきっちりやる人とやらない人でわかれます。僕はやったりやらなかったりですが、動画では全くやってません。

 

というわけで

改めて録画してみると難しいですね。結構難しいと思うんですが、なぜみんなやるんでしょうか。

多分、この曲はプレイヤーのスタイルが出しやすいのではないかと思います。ジャズっぽくも出来るし、ロックブルース的なアプローチでも良い。実際には難しく弾いてしまう人が多いわけですが、これをペンタトニックだけで無骨に弾きこなせたら、それはそれで凄く格好良くなるんじゃないかと思います。ある意味では複雑にやるよりよほど難しそうですが…。