Paul McCartney「London Town」のコード進行を科学する

By | 2017年2月13日

ウイングスの後期に発表されたアルバムタイトル曲。凝りに凝ったポールらしい佳曲ですが、アルバム自体の評価が低いのもあって、世間的にはあまり知られていないナンバーです。

Silver rain was fallin’ down upon the dirty ground of London Town.
なんて、何と叙情に溢れる詞でしょうか。

コード進行全貌

殴り書きで失礼ですが、これがこの曲の進行の全貌。サビでE、バース部でAに転調していますが、それに挟まれる部分の進行がかなり凝っています。

イントロ

イントロ


キーはDメジャー、3小節目でA7がくるのでここもDメジャーを維持しているような気がしますが、次のコードはE。ダイアトニック進行だとEm7とかになりそうですが、E7にかえてもあまり違和感ないところをみると、II7とも言えるし、ここでEメジャーに転調してるとも言えます。個人的には前者のイメージ。

ちなみに、同じ進行と同じメロディがサビの最後に出てきますが、そちらは明らかにキーEメジャーになっています。さらに同じ進行で1音下がったものがエンディングに登場しますが、こちらはキーA。この部分がこの曲を無理矢理つなぎ止めるような役割を果たしているようです。

 

サビ

ここがサビ扱いなのかAメロ扱いなのか謎ですが、個人的にはサビ始まりという印象が強いので、一応サビという位置づけに。

冒頭のメロディ、譜面ではレになってますが、正しくはシです…

開始がEコード始まりですが、イントロからの流れで行くとEはII7な気がするので、トニック感がどうも希薄。ところが、5度(シ)を羅列するメロディを2小節続けてる間にすっかりEメジャーになっていて、次のF#mあたりでは違和感はなくなります。

A6とE6が出てくる辺りは変拍子ちっくに聞こえますが、4拍子のままで収まります。イントロでも登場した流れが最後に登場。A7の箇所はメロディにも7thの音が出てくるのですが、ここでは恐らくキーEメジャーのIV7になりますね。ビートルズの「I’ll Follow The Sun」でも登場するコードです。

同じ音の羅列でメロディを作ってしまうのは「Silly Love Songs」や「Band On The Run」にも見られる手法。発想はよくあるんですが、なかなかこんなに綺麗にハマらないです。

 

バース部

上記のサビが終わるとそのままここに流れます。転調感がありありと出てるので、多少無理矢理な転調です。真ん中で区切ると、Aで一段落を見せる7小節目と、F#mからの8小節目以降と分けられます。

前半部はコード進行はシンプルなものですが、7小節で一区切りになっていて、その上で違和感を感じさせないというのはすごい。「Yesterday」と同じですが、朝起きると頭に流れていたというイエスタデイと違って、こちらは意図的にやってる可能性も。

8小節目からのF#m〜Aのクリシェの流れは、完全に別曲に挿入したかのような感じが出ていますが、メロディと相まって、きれいな流れに聞こえます。何というか、ヨーロッパ的な上品さをここに感じてしまうのは僕だけでしょうか。

 

エンディング

エンディング。ちょっとだけ間違いがあります。


※この部分、最後の F#m – Gdim – E/G# – A というのが2回あるんですが、譜面では間違えて1回しか書いてません。

急にブルースロックみたいになるギターソロを挟んで、最後のメロディ。サビ最後のメロディが1音下げた状態で歌われますが、なぜか最後はAに着地。

サビ最後の同じ部分はB→A7→Eですが、キーはEメジャーの状態を維持しています。ところがエンディング部はA→G7→Dと同じ進行ながら、キーがAメジャーの状態です。その結果、最後はAに着地しないと気持ち悪く感じるのではないかと思います。

同じ進行なのにキーが違うという妙なことになっているせいで、度数が変わり、各コードの役割も変わります。

サビ最後:B – A7 – E (V(7) → IV7 → I)
エンディング:A – G7 – D – A (I → bIV7 → IV → I)

忘れたころにもう一度このメロディが来ると、僕はいつも化かされたような気がするんですが、同じ進行でありながら度数が違うのが、何か居心地が違うように感じ、そう思わせるのかもしれません。

 

まとめ

久しぶりにちゃんとウイングスの曲を解析してみたら、思ったより複雑でした。ビートルズ後期からのポールの曲は本当に何を考えて作っているのかわからないものがたくさんあります。

ところで、これ、アレンジ上ではホーン隊やストリングスが大量に登場し、もはやバンドとは言えないサウンドになっています。ウイングスもデニー・レインしか残っていなかった時期でもあって、好き勝手に作り込んだのでしょう。ロンドンの風情を描写するのには成功しているように思えますが、このアルバムの評価の低さはその辺りにもある気がします。確かにアルバム後半(レコードのB面)はたいしたことのない曲が多数ですが、初期ウイングスに見られた爆発力やパワーが完全に失われている、ここがアルバム自体の評価を下げている一つの要因にもなっているんじゃないかと。

個人的には冒頭の3曲なんか大好きなんですが、やっぱり僕もよく考えたら「With A Little Luck」あたりまでしか聴いてないですね…。ラストの曲なんか野心的に黒人音楽っぽい雰囲気で良い感じなんですけどね。


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