突っ張りを使って防音部屋を作る

自分自身で運営している「森多ギター教室」の移転作業を5月に行いました。

元々自宅でやっていたレッスンを駅前のビルの一室に移す作業の中に、隣の部屋に対する防音壁という作業が最大の難関として立ちはだかっていました。作業の一部始終を公開します。

防音壁計画

部屋の全貌


こんないびつな形をした部屋を二つに区切ります。上が北で、隣人が住んでいます。

完成予定図。北側に音が漏れないように

防音壁で北側と西側の二箇所に間仕切りを作って、隣人が住んでいる北側は音が漏れにくいように全面をふさいでしまいます。ついでに簡易なドアを付けて入り口とし、防音カーテンで隙間をある程度ふさぎます。割と広い部屋なので、仕切り壁の向こう側に緩衝地帯を設け、物置に利用。カーテンではなく板で締め切ればより高い防音が期待できますが、トイレに行く時に困るので、一応これで手を打ちました。

防音室の場合は床も天上も壁を作りますが、ただのレッスンルームなのでアンプもそんなに爆音ではないし、外には新大阪駅が見えており、ひっきりなしに電車が走っているような場所。これで十分と踏みました。何より、一度に3人も入らなければならないレッスン室で床も天井もとなると、どれほどの作業が必要か想像もつきません。

壁の設置計画

隣の部屋に面した北側は、全面塞いで音漏れを防ぎます。骨組みを組み立て、そこに一面に板を張り付けます。1820×910のコンパネと、天上までの余った部分をふさぐためにカットしたものを3枚ずつ。

隣の部屋に面した方

西の廊下側には音が漏れても良いので、1820mm一枚だけ貼り付けて、上部はそのまま空けておきます。こちらはレッスンルームと待合の間仕切り的側面が強いのと、採光がなくなって待合が真っ暗になるのを防ぐためです。

廊下に面した方

レッスンルームの内部には防音じゅうたんを敷きます。これは自宅でやっていた時に使っていたものの名残。階下への騒音ももちろんですが、部屋内部の響きの調整にはそれなりに効果があります。

 

材料と突っ張りアイテム選定

賃貸なのでクギを打ちまくる訳にもいかず、色々考えた末、突っ張りを利用することに。2×4(ツーバイフォー)材を突っ張って柱として利用するアイテムには昨今色んなものが出てきています。

2×4で柱を立てて、コンパネをネジ止めし、間に吸音材を仕込むというやり方は、防音室製作をされてる方のほとんどが使っている手法のようです。

突っ張りアイテム

この手の製品の定番がディアウォール。ただ、今回は部屋の端っこではなく、真ん中辺りに立てるのに少し手間取りそうなのと、柱を立てた上に板を貼るという用途からすると、下にはかせる靴下部分が邪魔になりそう。

こうなりそう…

結局、北側はアジャスターと台座を別個に購入し、天井に1×4の薄い板を挟んで4箇所で突っ張ることに。天井側に板を挟むのは負荷を分散させるための措置。こちらは隣が普通の部屋なので、柱と骨組みも重厚に作っておきます。

使ったのはこれ。この2種類を4セット買いました。

そして、廊下側にはLABRICO(ラブリコ)を選択。こちら側は上半分が見えるので、見た目的なものと、下にはかせる下駄部分が薄くて、板を張り付けるのに障害になりにくそうといった理由によるものです。

板と遮音シート、吸音材

壁になる部分の板は定番のコンパネ。「構造用合板」という名前でコーナンで980円。たったの980円でも8枚ぐらい購入したので、結構な額になりました。レッスン室側から見ての内装部分には薄めのベニヤ板を選定。その内側には遮音シートを貼り、さらに内側に吸音材。吸音材は主にロックウールを使用。

 

柱を組み立てる

部屋の奥側は柱と言うよりも骨組みを立てる感覚なので、まずは床に木材を一面に広げて、骨組みを製作。L字金具でガシガシと2×4材を組み立てていきます。電動ドリルは必須。

製作開始

骨組みだけでも結構な重さです。何とか一人で持ち上げられる程度ですが、今回は助っ人を呼んでいたので、彼に助けて貰いつつ、天井に板を挟みながら突っ張っていきます。垂直を出しながら立てるためには、やはり一人ではきついかも。

ちなみに2×4と天井に挟んだ1×4はこちらの店であらかじめ全てカットしてもらいました。ホームセンターに比べるとやや割高ですが、まとめて大量にカットしてもらえるのはやはり助かります。自分で運ぶ必要もないですし。

廊下側はラブリコを使って柱を4本立てます。こちらは自分一人でほとんどやりましたが、上から5円玉を吊しながら微調整する作業はなかなか哀愁を誘うものがあります。

柱立ちました

 

板を貼り吸音材を設置

板を貼ります。貼ると言っても立て掛けながらネジで固定する感じなので、さほど力の要る作業でもありません。電動ドライバーで片っ端から止めていきます。素人のDIYなのでどうしても綺麗にいかず隙間が出来たりしますが、後々壁紙など貼ることを考えるとこのままでも問題なし。

手伝いをしてくれたK君。サンクス!

吸音材はこのロックウールを注文。

膨大な量が巻き巻きで送られてきます。切って埋め込んでいく感覚ですが、柱同士の隙間よりロックウールの幅の方がやや長いため、あいだに押し込んでいくと、わざわざ固定しなくてもぴたっとはまって動きません。これはラク。固定方法をいろいろ考えていましたが、押し込むだけでOKでした。

これがロックウール

ロックウールはカッターで簡単に切れますが、ほこりのように舞ってさらにチクチクするので、軍手は必須。さらに袖の間に入ったものがずっとチクチクして不快です。できれば袖をゴムとかで止めておくといいかも。

 

遮音シートとベニヤ板を貼る

遮音シートは色々ありますが、あまり効果のないという意見や、効果ありの意見と、色々あります。鉛シートではなくゴム系で性能の高さを謳っているのは、まずサンダムCZ-12で、安い物であればダイケンのものなどがあります。

実際に公表されている遮音性能などは参考程度にしかならないので、予算で選ぶことになるでしょうか。僕は今回の購入は基本的にはダイケン、自宅レッスン時に使っていたのはサンダムでした。

遮音シートはタッカーで固定し、その上にベニヤ板をネジ止めします。

 

防音じゅうたんとカーテンを設置

防音じゅうたんは自宅レッスン時にも敷いていた物を移植。カーテンは予算の都合から2万円以上もする専門のものは断念し、通常のカーテンに近いものを選んでいます。

防音じゅうたん

パネル型の「静床ライト」をチョイス。これは手軽な防音じゅうたんとしては一番ポピュラーなもの。防音性能がどれほどあるのかは正直わかりませんが、じゅうたんを敷くと妙にレッスン室っぽくなるのと、反響を押さえる効果はかなりあります。

床は先に遮音シートを一面に敷いてからじゅうたんを敷き詰めていきました。

じゅうたん施工中

防音カーテン

「コーズ」という製品をチョイス。通常のカーテンの倍ぐらいの重さがあり、普通のカーテンレールではこれ以上は無理といったところでしょう。記事も分厚いので、普通のカーテンに比べると遮音性はありそうですが、あくまで気休め。

 

結果を計測してみる

レッスン室と、北側の壁の向こう側の物置地帯での音を計測したものが以下。

レッスン室内部
北側壁の向こう側

ビートルズの「Helter Skelter」を流して計測。中は画像では67ですが、大体65〜72デシベルぐらい。外は57となってますが、大体52〜60ぐらいで推移してました。平均して15デシベル程度の軽減です。そこそこ大きいオーディオの音が日常会話レベルの音量になる感覚で、おおむね成功と言えるでしょう。床と天井をふさぎ、かつ側面も一切の隙間を無くして作れば20デシベル以上の軽減は望めるようですが、今回はこれで十分です。

 

まとめ

防音室となると、かなり大がかりな工事が必要です。家の倉庫部分を利用したりしている人もいますが、賃貸のマンション暮らしではそれも中々難しい。

隣人への騒音対策とか程度であれば、このように壁で仕切ってしまうぐらいでもかなりの効果は期待出来ると思われます。もちろんアンプで爆音やドラムなんかは無理ですが、アコギと歌程度なら十分ではないでしょうか。特に角部屋とかであれば、片方塞ぐだけで何とかなるので、一度試してみる価値はあるような気がします。