03 私のセンター試験





 これを書いているのは、実際に受験シーズンで、受験を終えた1年後である。最近、懐かしい記憶がよみがえっているので、それを記してしまおうという次第である。
一年前に大勢の人々の中、紛れてコツコツと鉛筆を哀しく動かす自分が鮮やかに脳裏に写り、とても懐かしい。


 受験シーズンというのは、通例まず1月上旬のセンター試験で幕を開け、2月はじめの私学入試を経て後、2月下旬の国公立入試前期、そして3月の後期試験までを指す。ここまででなかなか面白いモノがたくさん見られるのである。

 まず、一発目と呼んでそれにふさわしいのがセンター試験である。

 これは偶然悪かっただけで後の計画に大きく響くという、どこぞのシューティングゲームの1面のような重要な試験である。そして国公立を狙うモノにとっては第一の関門でもある。


 ところで、これは実に格好悪い名前で、まだ中央試験の方がマシでは無いのか、と僕は常々思っていた。センターと試験、英日を仲良く同居させる等、文部省がもっともやりたがらないのではないか、と非常にいぶかしく思っていたのである。しかし、大学入試センターの名を見てああなるほどと思った。ただ単に大学入試センターが行うのでそう呼ぶだけなのである。


 前日は学校の先生共が「明日の注意」なるモノを配ったり、なんと大学までの道のりと時間を、"駅すぱあと"等で完全に割り出したりしている。
ウチの場合は神戸大学だったが、タクシーを使うのも一手、など、駅からの徒歩時間までも考慮に入れられたりしており、試験本番と関係のないたかがその道程だけであるに関わらず、まさに小学校低学年の遠足の如き気合いの入れようで恐れ入る。前日の寒い体育館での集会の方がよほど身体にこたえ、明日風邪をひくのでは…、等と思ったが、僕は実際前日まで風邪で寝ていたので、友人の話を再現したのみである。


 そして、本番は親しい友人と共に大学まで行った。行く途中、非常にたくさんの受験生がいた。僕は日本中でも壮絶の域に入る自分の世界史のマイナー知識を、わざと他人に聞こえる声で友人にしゃべりまくり、周囲を不安に陥れることに成功していた。これだけの長蛇の列についていくのに、どこの阿呆が道に迷うのだ、と思ったが、それは伏せておいた。そしてもちろんタクシーなど使わず、まさに長蛇の列の一部分と化して歩いて行き、普通にテストを受けた。


 テスト終了後は案の定、全員での答え合わせが始まる。「あそこは4だった」とかいう類の、特に合わせたからと言って、何も変わらず、何の意味もない空しいサウンドがたくさん寒い廊下に響いた。良く定期テストの時に友達同士でやる"アレ"である。やがてなにごともなくテストは終了した。2日目のテストもより単純なもので、テストのない空き時間に三宮に遊びに行ったりしていたのだから、まったく始末に負えない。ちなみに、この時に買ったCDが「Night Ranger - Greatest Hits」と「Dokken- Beast from the East」の2枚であったが、何の役にも立たなかったセンター試験の点数よりも、少なくともこちらの方が僕の人生で大きな役割を果たしている。


 帰り際には「また来年があるさ」と肩を叩いて、励ましたくなるような典型的な顔をひっさげて歩く人間もいる。と思えば異様に涼しい顔をしている人もおり、全く世の中の不公平を感じざるを得ない。しかし、何というばからしいテストであろう。まさに巧妙に作られた偽センター試験を受けてきたようだ。その辺の予備校で受けた模試の方がまだ緊張感があった。


 「ああ、こんなもんか」となんとなく思った。2日目の帰りにはマクドナルドでポテトを買い、電車で偶然遭遇した女友達数人にいっぱい取られたことのみを覚えている。