理論講座<スケール編1>ペンタトニック・スケール〜マイナー・ペンタとメジャー・ペンタ

ペンタトニック・スケールは、ギターを弾く人が真っ先に覚えるスケールです。世の中のギターソロの7割ぐらいはこの音階に基づいてできているんじゃないかと思えるほど。ギタリストには必須で最重要なスケールです。

メジャー・スケールとマイナー・スケールがあるように、ペンタトニックにも、メジャー・ペンタトニック、マイナー・ペンタトニックの2つがあります。

Aマイナー・ペンタトニック・スケール

大抵の人が最初に覚えるこの図。これはAマイナー・ペンタトニック・スケールのポジション図です。赤い点がルートで、6弦5フレットがAなので、Aマイナー・ペンタトニック・スケールとなり、8フレットから始めたとするとCマイナー・ペンタトニック・スケールとなります。

青:Aマイナー(Cメジャー)・ペンタトニック

赤:Cマイナー(Ebメジャー)・ペンタトニック

Cメジャー・スケールとAマイナー・スケールが同じ音列だという話は何度もしていますが、同じようにCメジャー・ペンタトニックはAマイナー・ペンタトニックと、まったく同じ音列です。上のキャプションではカッコ内にメジャーキーでの名前を表記しています。

ペンタトニックの正体

メジャー・ペンタトニック・スケールとは、1オクターブ7音のメジャー・スケールの中から第4音,第7音の音を抜いたものです。同様に、マイナー・ペンタトニック・スケールはマイナー・スケールから第2音,第6音を抜いたものです。

Aマイナー・ペンタトニック・スケール

Cメジャー・ペンタトニック・スケール

Cメジャー・スケールから4つ目、7つ目の音を抜くと、「ドレミファソラシ」が「ドレミソラ」になり、1オクターブが5音になりますね。この”5”という数字がペンタトニックという名の由来です。

このスケールはギターでは真っ先にアドリブの際に使われますが、それはなぜでしょう。次で解説していますが、無骨なブルース系のバッキングに合わせてマイナー・ペンタトニックでチョーキングするだけで、えも言われぬ格好良さが出てきます。もともとブルース系音楽に相性のよいギターという楽器には、この音列が合っているようです。しかも指板上で覚えやすく弾きやすい形をしています。ギターで幅広く使われる理由はこんなところにあるのではないでしょうか。

次からは実際にマイナー・ペンタトニックを使ってのアドリブ実践例に踏み込んでみましょう。

メジャー・ペンタトニックはマイナーと違いあまりかっこよく響きません。浪曲のようなメロディになってしまいがちです。メジャー・ペンタトニックは和名では「民謡音階」ともいい、日本に昔からある四七抜き音階と同じ音階なので、どうしても民謡や童謡的なメロディになってしまうわけです。

そういうわけで、メジャー・ペンタをうまく使うのはかなり難しいですが、ラリー・カールトン「Room 335」のように、音列や表現を工夫したり、「Let It Be」のギターソロのように、バックの雰囲気次第で、かっこ良く響かせることも可能です。

アドリブでの利用

細かい話はぜんぶ置いておいて、乱暴に分けると…

・暗い場合(マイナー・キー)
・ブルース進行の場合

これらの場合、途中で転調しない限りは、マイナー・ペンタトニックですべて大丈夫です。

暗い場合(マイナー・キー)

Cm Ab Bb Gm
Ab Eb Ab Bb7

コード進行・サンプル

アドリブソロ・サンプル

響きが暗く、Cmから始まっている上、最後をCmで締めると一番はまりがいいという事からも、キーはCマイナーで決まりです。使うスケールはCマイナー・ペンタトニック・スケール。

こちらはもう少しシンプル。Gm7とC7だけの進行で、ワンコードやツーコードとか言われる単純なパターンの仲間です。セッション行ったりジャズロックやったりすると頻出。使うスケールはGマイナー・ペンタトニック。

ブルース進行

A7
D7 A7
E7 D7 A7 (E7)

コード進行・サンプル(アドリブサンプルは下のブルーススケールの項を参照)

Aのブルース進行。ブルース進行はキーの違いはあれどこれが基本の形であり、そこからマイナー・ブルースやジャズ・ブルースなどの派生進行が生まれています。

I7-IV7-V7のみっつの7thコードで作られる、よく考えると不思議な進行ですが、「ブルースにマイナー・ペンタ」というのはロックギタリストのお約束になっており、マイナー・ペンタの練習にもこの進行はよく使われます。ブルーノートと呼ばれる”b5th”を混ぜて使うことも。

ブルース・スケール

マイナー・ペンタトニックに”b5th”(俗にブルーノートと呼ばれる)を足したものをブルース・スケールと呼ぶ場合があります。

b5thは経過音として使用する他、チョーキングやスライドで一つ下の音からずり上がるような発音をすると、とたんにブルージーさが増してきます。

ブルーススケールを使ったアドリブ・サンプル(コード進行は上記のブルース進行)

ブルース進行の不思議…

メジャー系の響きを持つ、セブンスコードのみで作られたブルース進行は、実はメジャー・ペンタトニックもマイナー・ペンタトニックも両方使えます!うまく両方を合わせることで、マイナー・ペンタだけではないカラフルなソロが取れ、ブルース進行上での弾き方に様々なアプローチを生み出すことが出来ます。

ちなみに、メジャー系である7thコードが軸となったこのような進行に、マイナー・ペンタトニックが合う理由については、様々な説があり、未だ明らかになってはいないそう。

人類に根ざしたペンタトニック

ペンタトニックは日本を含む東アジアやボヘミア、スコットランドなど世界中のトラディショナルに登場します。あまりにもあまねく世界中で見られるため、「人間が唯一生まれながらにして持っているスケール」と言われることさえあるようです。スコットランド発祥の「蛍の光」などが、地理も気候も全く違う日本において、なお強烈な郷愁を感じさせるのは、メロディがペンタトニックに根ざしているのもひとつの理由でしょう。