理論講座<コード編5>テンションコードについて

テンション・コードとはテンション(緊張)という語からもわかるように、4和音コードのさらに上に音を重ねることによって、緊張感を増した響きを作り出したものです。

キーCメジャーの場合、テンションはこのようになっています。

テンションには9th、11th、13thのみが使われ、それぞれ1オクターブ上の2nd、4th、6thです。

#、♭のついたものも存在しますが、b11thや#13thがないのは、11thの半音下はM3rdと同じ、13thの半音上はm7thと同じなので、重ねる意味が無くなるためです。

♭や#のついたテンションを特にオルタード・テンションと呼び、マイナー・ツーファイブの進行や、IIIm7が変化したIII7の部分では特に欠かせないテンションです。

テンションの使い分け

maj7コードには9thや#11th、m7コードには9thや11th、7thコードにはオルタード・テンションを含む多数のテンション、という風に、各テンションノートはコードによって使えるものが決まっています。7thコードは非常に使えるテンションが多く、選択に頭を悩ませることもしばしばです。

コードネーム表記について

原則として4和音の上にテンションを重ねたときに、そのテンションのみをカッコの中に表記します。C7(13)はセブンスコードの上に13thが乗っかっているという意味で、(#9)であれば、#9thが乗っかっている事を指します。

ただし、音がルートからつながって配置されている時は、カッコを付けない場合もあります。CM7(9)はルートからトップの9thまで「1-3-5-7-9」と隙間無くつながっているので、CM9という表記でも大丈夫です。テンションを2つ含んだFm7(9,11)も、「1−3−5−7−9−11」とすき間なく堆積しているので、Fm11という表記でもアリです。

ちなみに、3和音(トライアド)の上にテンションが乗っかっている場合も同じ書き方をしますが、C(9)などは Cadd9 と書く方が多いです。このような3和音+テンションというパターンの場合、一応テンションは使われてますが、通常テンション・コードという範疇には括られません。

指板上でのテンション

ギタリストの場合、コードの構成音を知っても、普通はそのまま押さえられないので、コードフォームに展開していく必要があります。テンション・コードは音数が増えるので、5度を削る押さえ方が多く、ルート、3度、7度を低音弦側で押さえて、テンションを1弦や2弦上に配置するのが主流です。

4和音を必要最小限の音で押さえる。

maj7コード

5弦ルートの場合、5thを削る事がほとんどです。6弦ルートの時の9thは音域がひとつだけ飛び抜けて高いので、5弦ルートのフォームに比べるとあまり使われない印象。4thの音が半音上がった#11thは、IVmaj7の時にまれに使われるほか、響きにクセがあるので、曲の最後にむりやり入れてみても面白いです。

Cmaj7(9)

6コード

トニック系、サブドミナント系のImaj7、IVmaj7の代わりとして使えるのが6コード(コードと度数<2>参照)。6(9)も基本的にmaj7(9)などと同じ立ち位置で、5弦ルートと6弦ルートで押さえ方が変わらないという珍しいもの。69コードはボサノヴァの定番コードでもあり、4度堆積ゆえの、前衛的な響きが好まれて使われることもあります。

C6(9) 6弦ルート

C6(9,#11)

m7コード

基本フォームは5弦ルート6弦ルートともに、メジャー7thコードの7度と3度を半音下げたもの。5弦ルートのm7(9)はCharの有名曲でも登場する、ギターの常套コードです。11thは9thを入れず、m7(11)という形を取ることも多く、独特のかっこいい響きがあります。

Cm7(9)

Cm7(11)

7thコード

7thコードは使えるテンションが多いので、6弦ルート、5弦ルートともに5thを完全に省くのがポピュラー。ただ、5弦ルートの場合は9thの真下に5thがあるので、9thコードの際に薬指で一気に三本押さえて鳴らすことも。9thと13thを覚えれば、あとは半音上げたり下げたりすると、♭や#に対応できます。7(#9)はいわゆるジミ・ヘンドリックス・コード。

C7(13)

C7(9)

C7(#9)

7(-9)とディミニッシュ

7(-9)コードは2〜5弦だけで押さえることが多いコードですが、1弦に5度の音を追加すると、1〜4弦でディミニッシュコードが出来上がります。

この場合ルートが消えるので、ディミニッシュはルート無しの7(-9)コードととらえることもできます。7(-9)のところにディミニッシュを使い、1音半ずつ並行移動などという演奏もよく行われます。

m7-5コード

ギターではテンションを入れて弾かれることが少ないコード。通常削っていた5度が重要な働きをしているため、できるだけ鳴らしたい、そのためテンションを入れる余裕がなくなる、といったところでしょう。b5thを省いて11thにするような弾き方は、たまに見られます。Em7-5(11)がジャズの名曲「Stella by Starlight」の冒頭で使われます。

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