ばらばらアルバムレビュー・その1

新学期、新年度が始まってしばらく経ちます。僕自身も個人的に引越なんかがあり、ばたばたしてますが、ちょいとここいらで、前年度マイベストなアルバムのレビューなどを。

ちなみに時代、地域、ジャンルなどはちゃめちゃで、間違っても去年発売された、というリアルタイム性とは全く無縁。凄まじくジャンルや時代性が違うのが共存したりする予定なので、タイトルもばらばらというのを付けています。その1と銘打って、暇なときに増やしていく予定です。

 

SOLAS「Reunion – Decade of Solas」

去年一番聴いたアルバムのひとつ。個人的に秋冬に掛けての時期に合ったのか、今年にはいってからはやや落ちてますが、それでもよく聴いてる一枚です。
Solasは在住アイルランド系アメリカ人発のアイリッシュバンドですが、the Corrs的にポップス色をあざとく押しすぎてもおらず、かといってAltanのようにフォークロア的要素が強すぎもせず、聴きやすさという点において、良い部分でバランスを保ってるように思います。

16ビート全開のインストも思わず引き込まれますが、繊細なヴォーカルが入った、侘びを強く感じさせるバラードの方が個人的には好みです。僕自身元々Karan Caseyのヴォーカルから入ったので、当然と言えば当然なんですが…、バラードにおける透き通った無限性のようなものは、Solasにしか出せないんじゃないか、と思うほど。

このDecade of Solasは10年間で入れ替わったメンバーが再結集し、過去の名曲をライヴで数多くやりまくるという、どこぞの島国のフュージョン・バンドのような企画になってます。その性質故、ベスト盤的要素を兼ねているのも嬉しいところ。どの曲も原曲以上に熱く、メンバーの楽しさが伝わってくる演奏も素晴らしいの一言です。DVDとCDが同梱ですが、DVDはライヴオンリーではなく、各メンバーのインタビューなどを挟みつつ…という構成になってます。

上が国内盤、下が輸入盤。解説の要らない方は輸入盤が良いでしょうね。なんといってもこの値段の差。

 

松任谷由実「時のないホテル」

ユーミンは去年の秋頃にベスト盤が出て、そのころに一瞬注目された感があります。ここ10年ぐらいでベスト盤が多く出てますが、今やアルバム総数も相当数に上り、まとめの時期に入ったということでしょうか。

これはそんなユーミンの松任谷時代初期の名盤です。ファンの間では史上最も暗いアルバムと評されています。が、このアルバムの持ち味はもちろん暗さではありません。個人的には大衆性とアート性のぎりぎりのバランスじゃないかと思ってます。

冒頭を飾る「セシルの週末」とラスト手前に収められた「コンパートメント」の落差の激しさが示すように、音世界は万華鏡のようにめくるめく移り変わります。真剣に聴けば聴くほど、有無を言わさずその世界に引き込まれていく力がこのアルバムにはあります。

歌詞の内容は軽いものから重いものまで様々ですが、少し憂いを含んだ内容が多いです。これも暗さを助長している要素のひとつではありますが、そこにこそ人が生きることに対しての本質的な悲しさのようなものを感じずにはいられません。最後の「コンパートメント」から「水の影」に至る流れは、人間の生の究極的なところを音に乗せている感があります。一旦は生を否定しかけながらも、最後には生きることに対する愛が滲み出ている…そう僕は感じています。

ユーミンをあまり知らない若い男性にこそ聴いて欲しい、日本の音楽史に残る名盤です。