ばらばらアルバムレビュー・その2

Karl Böhm: Vienna P.O.「Beethoven :Sym.#6 “Pastoral”」

カール・ベームがウィーンフィルを指揮してのベートーヴェン「田園」。一時期田園ばかり聴きたくなった時があって、その時に色々聴いてたんですが、自分の中で一番しっくりきたのがこれでした。

もともとは意外に速いスピードで演奏されていたという話もある田園ですが、このベーム盤はびっくりするほど穏やかに演奏されています。ベームは完全に作り込んだものをそのままステージでやるので、あまり面白くないという話は非常に多いです。が、この曲ではそのカチカチに作り抜いた雰囲気が見事にはまっており、単に田園というにとどまらず、雄大で広大な空ともいうべきものを感じさせます。

鳥のさえずりはあくまで微笑ましく、農民の集いは華やかに、雷雨が去った後のフルートは静謐そのもの。まるで絵を見ているかのような演奏です。

思えばドヴォルザークの「新世界より」もベーム盤が結構好きなので、どうも僕にカール・ベームという人の演奏は相性が良いのかもしれません。

 

奥華子「TIME NOTE」

桜も今年はほとんどが散ってしまって、残るは山桜のみというような今日この頃。桜をモチーフにした曲は日本には数多いですが、僕が一番好きなのが、奥華子の「桜並木」だったりします。

奥華子の魅力は、よく言われる歌声はもちろんのこと、情景をそのまま詞にしたかのような歌詞の世界と、それを表現するメロディが完全にかみ合ってるところだと思ってるんですが、このアルバムは、この曲を含め、じわじわ心にしみいってくるような楽曲に満ちています。

もともとが弾き語りのストリートミュージシャンからの出発だったということもあってか、どれもアレンジは控えめで、ピアノと歌以外は必要最小限の音しか入っていません。それがまた曲の世界を非常に美しく表現出来ている一因なのですが、この後のアルバムからは、アレンジが重厚になってきていて、いかにも売れそうな普通のJ-POP化してきてます。奥華子の曲にあざといオーケストレーションはいらんだろ。

映画「時をかける少女」主題歌の「ガーネット」は映画とは違う弾き語りバージョン。挿入歌の「変わらないもの」はこのアルバムでもベストトラックのひとつです。