FUJIFILM「FUJINON XF 18-55mm f2.8-4」実写とレビュー

フジフィルムのXマウント・フジノンレンズ「XF 18-55mm f2.8-4」というと、ミラーレス一眼の中等級に位置するX-E1の時代から、標準レンズの代表的存在。キットレンズらしからぬ美しい描写で人気があり、未だに新品で4万を超えているその価格からも人気ぶりがうかがえるというもの。発売3年も経つ今さらレンズのレビューをしてみます。

外観

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
キットレンズにありがちなプラスチック製ではないので、それなりの高級感があります。写真ではほこりが結構ついてますが(笑)ズームする際に回す部分の溝が細かすぎて、ほこりが溜まりやすいです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
手ぶれ補正はばっちり付いており、絞りリングもレンズ側搭載。この辺、フィルムカメラっぽさを意識したにくい配慮ですが、他の一眼レフを使ってたりすると、設定に多少迷うことも。

 

フィルムらしい写り

ここからは実際に撮影した写真を使います。今年の春に行ったポルトガルにて。乾いた空気と色合いの強い南欧のカラフルな雰囲気がレンズにもマッチしたように感じます。ちなみにカメラはX-E1。フィルムシミュレーションはすべてProvia(スタンダード)。撮影場所は首都リスボンから。

1/2400 f5
1/2400 f5 ISO400
1/640 f3.6
1/640 f3.6 ISO400
暗部の描写感というか、質感はすばらしいものがあります。街灯のほうの写真は窓に陽の光が反射していますが、ゴーストやフレアになることなくきっちりと描写。それでいて暗部との対比でぎらついた陽の光がしっかり描写できています。

明暗がはっきりした、フィルムっぽい写りはカメラ側によるところも大きいです。フジが最も入れ込んだ部分というのもさすがに分かる気がしますね。逆にこの描写が無理ならフジのカメラは合わないということ。

 

美しいボケ味で解像感は並以上

1/42 f5.0 ISO800
1/42 f5.0 ISO800
1/18 f2.8 ISO800
1/18 f2.8 ISO800

リスボン市電の方は金属のさび具合まできっちり描写しています。ピントが合った部分の解像感は過不足無しです。ボケ味はなだらかで、淡くなっていくようなイメージ。さすがに単焦点には及びませんが、かなり良い線いってます。下の写真はサンタ・ジュスタのリフト内部。1/18というSSゆえに手ぶれ補正が活躍しています。f値開放ですが木の質感などしっかり出ていますね。こういう暗部の描写にはフィルム風味の強いこのカメラの真骨頂。窓の外にある明かりがボケになって現れていますが、非常に素直な印象です。

1/240 f8 ISO200
1/240 f8 ISO200
等倍拡大
等倍拡大
こちらはポルトガル第二の都市、ポルトにて。

中心の解像感は素晴らしいものの、右下の等倍拡大のものを見ると、さすがに周辺部に行くにつれてやや流れているように見えます。この写真自体、中心部と周辺部の距離がそれなりに違うので参考程度にといったところですが、ぼけていると言うよりは流れている感が強いように感じます。また、この写真ではあまり分かりませんが、18mm広角端でやや周辺減光が発生するきらいがあります。

 

逆光耐性は過不足なし

1/750 f4 ISO400
1/750 f4 ISO400
1/240 f9 ISO400
1/240 f9 ISO400
ポルトより北東にバスで一時間。ポルトガル発祥の地とされるギマランイス。

上の写真は逆光をそのまま活かした雰囲気ですが、フレアがかっているもののゴーストは見られません。フレアも良い具合に出ている感じで、淡い雰囲気が出ているものの解像感が落ちていないのは素晴らしいです。下の物は直接陽の光を入れているので、さすがに盛大なゴーストにフレアが出ていますが、太陽を直接入れてこのぐらいです、という参考にどうぞ。

1/340 f7.1 ISO800
1/340 f7.1 ISO800
こちらもフレアがかっている一枚。店先や路地の陰影の濃さに窓枠の緑の映え方など、フジの真骨頂ここにありという感じ。家に帰ってこれを大画面で見たとき、絵的な一枚がこれほどつくりやすいレンズにカメラもあまりないなー、と感じました。さすがに空は白とびしますが、下に行くにつれて急速に光を失っていくこのバランスが見事。

 

16-50mm F3.5-5.6との差は

周辺の解像度、および18mmでの周辺減光などの欠点もあるにはありますが、これほど優秀なキットレンズもあまりありません。単体で購入しても十分に使えるポテンシャルをもった逸品です。

今回使っていたレンズの下には「XC 16-50mm f3.5-5.6」というものがありますが、描写的にはあまりかわらないというレビューをたくさん目にします。望遠端の55mmや一段上の明るさ、あるいはレンズそのものの質感を大事にしたい向きには18-55mmを。広角での2mmは結構違うので、16mmでの広角を多用したいという場合は勿論、あくまでも安くしたい、軽い方が良いという実利的な部分に重点を置くならば16-50mmで良いと思います。が、写真はレンズの性能や値段云々ではなく、質感や重量によって撮りに行く自分自身の心構えも変わってくることが多いため、ここは悩ましいところでもありますね。

 

フジフイルムの哲学を見る

ミラーレス一眼の世界では比較的新参者のフジフィルムは、その描写感で他者との差を図っている感じがします。フィルムメーカーならではのその質感が最大の武器といいましょうか。フィルムシミュレーションの描写は確かに多彩であり、いわゆるデジタル臭くない、スペックに現れない部分で好ましい仕上がりになります。旅行ではNikon D7100とこちらもキットレンズのついたものを一緒に持っていっていましたが、単純な描写力では確実にフジの方が上を行っているシーンが少なくなかったですね。

しかし、僕の使っているX-E1は描写こそ文句なしなものの、その操作性やスピード感にはまったく期待出来ません。一番上にある信号の写真はもともとトラムが走ってくるのを見つけて、急いで狙ったのですが、スリープ状態からの復帰に時間がかかりすぎて結局行ってしまったという、苦渋の一枚でもあります。

左の方にちょっとだけ写っているトラムが…
左の方にちょっとだけ写っているトラムが…

2018年初頭、現在のX-Eシリーズ最新機はX-E3。店頭で少し触ってみましたが、上の写真を撮ったときのX-E1のもたついた動きなど微塵も感じられませんでした。サイズもやや小さめになり携帯性が増した上、AFの速さや全動作が比べものにならないほど速くなっています。

まあ、二つもモデルチェンジすれば当たり前とも言えますが、特に速写性が大事なスナップなどを狙う方は、変に中古を選ぶより、X-E3を手に入れた方が良いでしょう。

というわけで、長々と書いてきましたが、フジフィルムは単焦点がラインナップに多いところから見ても、本当にこだわる人をちゃんとターゲットにしています。このキットレンズもそれに対する矜持を示した、メーカーの意地が見えてくる気がしますね。