アンディ・ティモンズのアルバム「Resolution」冒頭を飾るナンバー。クリニックやライブでも1曲目にやってることが結構あるので、コピーを試みた人も多いんじゃないかと思います。
今回はそんな「Deliver Us」を解析。なお全体の譜面はこちらです。
これは僕がコピーした動画。アングルがやや悪いですが勘弁してください。音色についてはAtomic Amplifireをリアンプで利用。最下部にセッティングなど書いています。
曲のキーについて
ベースとギターしかないのですが、フレーズや進行からかなり詳細にコード進行を捉えることができます。出だしはD7ですが、キーはGマイナー(Bbメジャー)。ラストはDで終わるので、III7で終わってるような感覚です。
ちなみに、曲調的にはGマイナーで間違いないですが、マイナーキーで見るとややこしいので、今回はBbメジャーで記載します。解説中は Bbmaj=Imaj として表記します。
イントロ
この曲の顔となるリフがこれ。
各ロングトーンの終わりに高音側に素早くスライドしていますが、これが結構このリフの味を出しています。そして、1発目に鳴らすDの開放弦の音は、その小節を通して消さず、1小節目ラストの3弦5fの音と同時に消します。
全体的にオリエンタルなエキゾチックさが漂いますが、III7始まりなのがその理由。フリジアン系の響きが残っているわけです。
Aメロ
メロディを弾いてコードのルートや和音を弾いてを繰り返すメロディ部分。トリオでの薄さやコード感の希薄さをこれでカバーしてます。2段目ラストのFコードは本人の動画を見ると、指で弾いているようです。
中間リフ
ドラムがスネアの頭打ちになる箇所。後ろでワウの掛かったギターが登場します。ここは簡単ですね。しいて言えば最後のチョーキングから勢いよく音を詰める箇所が難しいぐらいでしょうか。
1stソロ(前半部)
最初の辺りは特に難しいところもなく、まあチョーキングの音程ぐらいでしょうか。上段のラストから下段に至る上昇フレーズは結構アンディ・ティモンズがよくやるパターンです。難しいのはこの譜面から下の譜面に繋がる辺り。
ちなみに、ここから実際にはワウが掛かってますが、僕自身は動画収録時サボりました。
上段の始めの辺りはかなり難しいです。1小節目は指が絡まりそうになります。20fだけ小指でやって、あとは人差し指〜薬指でやるのが正しいと思いますが、小指を使わなくても弾こうと思えば弾けます。
後半部の下がっていくフレーズは「Electric Gypsy」などにも似たパターンが登場。3連をうまくいかしたフレーズですが、これもアンディお得意のパターンです。
下段の譜面は2小節目に登場する3連がミソ。アドリブでも16分にうまく3連を混ぜてくる人ですが、こういうのをちゃんと練習しとくとタイム感とか良くなりそう。メトロノームでしっかりやる価値がある部分。
1stソロ(後半部)
ワウがなくなってからのソロ後半部。この譜面の1小節目後半部分はEm7-5のコードトーン。指使いが意外に難しく、僕も動画ではミスりました。
ちなみに、この部分通して Eb – Em7-5 の繰り返しとなっており、強烈な場面転換が図られています。コードトーンを随所に配置してコード感を出している辺りは、かなり考え抜かれている印象です。
前半の繰り返しフレーズはソロ中間部のハイライト。これまたEm7-5を想起させます。指使いはややこしいものの、動きが単純なので繰り返してれば弾けます。ただ、スピードを維持するのが意外に難しいです。速くなりすぎないように注意。
下段の譜面にあるスライドで6度音程を下がっていくフレーズはかなり厄介。場所を覚えてスライドで行きすぎたりしないよう注意しながら練習するしかないです。リズムは本人もかなり雰囲気でやってるような感じなので、結構ラフでも大丈夫かと。
ラストソロ
リフに戻ったあとの最後のソロ。2小節目にあるのはFメジャーペンタ、途中で切れてますが、4小節目からのフレーズはBbメジャーペンタ。同じペンタトニックでも上のコードに合わせてキーを変えています。Gマイナーペンタ1発でも大丈夫なんですが、これもコード感を出したいという意図でしょう。
フレーズ自体はただのペンタトニックなので他の部分に比べると難しくはないですが、微妙に覚えにくいです。ペンタトニックを色んな場所で把握する材料と考えて練習するのも手。
2小節目の上昇フレーズが地味に嫌らしいです。6弦11fなんぞは僕は小指を使ってますが、手前からの強引な流れからいっても、薬指だけで行ってしまう方が楽かもしれません。右端にある3弦11fはD7の3度の音ですが、D7を想起させるのに一役買っています。
この曲の最大の目立つフレーズがこれ。ピッキングはどうやってるのか謎ですが、僕は速さ的に1弦2弦をスウィープみたいに両方アップでやってます。1弦の音を弾いたあとにミュートしたいんですが、いくらやってもきれいに出来ません…。ここは速すぎて原曲を聴いても動画を見てもはっきりと分からない場所です。
ちなみに、次のポジションに移る際、上昇フレーズを押し込むと原曲っぽくなります。
僕も動画ではこう弾いてます。本人もこうやってるような気がしてならないんですけどね…。
さて、もうすぐ終了というところでこの超ポリリズム。嫌がらせみたいなフレーズです。特に後半の弦飛びペンタトニックは最悪です。かっこいいんですけどね。
この手のポリリズムは実はしっかりメトロノームを使って、1拍ずつを確実に把握していく方が最終的に綺麗に弾けるようになりやすいです。勢いで行ってしまいたいところですが、ここは一つ急がば回れ的な発想でやりましょう。良い機会と思って、いっそこんな本でリズムを徹底して鍛えるのもおすすめ。
動画での音色について
AtomicのAmplifireをリアンプで利用。下のがセッティング。
中密度の歪みを持った、シャリシャリしないサウンドを狙ってKornfieldというのを選んでみましたが、Atomic特有のブティック系モデルとのこと。ブースターはクリーンブースターをゲインアップのために若干掛けています。
Atomic Amplifireについてはこちらに詳しい記事を載せました。
Atomic AmpliFire Pedal導入!実録レビュー
ギタープロセッサー系では最小最軽量でしょう。
ちなみに、アンディ・ティモンズ本人はメサブギーのLonestarですが、メサブギーって何か肌に合わないんですよね。特にRectifireはどうも合わない。Lonestar使うとあんな音になるんだろうかとたまに思いつつも、実際に弾いたことはないです。
まとめ
さすがに難しい一曲。この人の曲に簡単なものなんかないですが、僕が今までコピーしてきた数曲の中ではまだマシです。「Super ’70s」なんかめちゃくちゃ難しかったですからね…。
しかし、最後のポリリズムフレーズとか、色々勉強になる曲ですので、部分をこなしていくだけでもかなりのレベルアップが図れると思います。
それにしても、トリオでの演奏を見越して、フレーズの随所にコードを感じられる部分を潜ませるのはさすがといった感じ。凝ったコード進行も含めて、アンディ・ティモンズのライティング能力の非凡さを感じさせます。
この人の作曲部分の根っこには恐らくビートルズがあると思うんですが、その部分が優れた作曲能力を感じさせる源になってるのかも。
卓越した演奏能力と曲作りにおいても充実したセンスを感じさせる、稀なギタリストだと思います。