ギタープロセッサー「HeadRush MX5」使用レビュー

ギタープロセッサー百花繚乱の様相を呈している昨今、大型で重いものばかりだったのも今は昔になりつつあります。

そんな中、HEADRUSH MX5を年始に購入しました。僕がこの機種を選んだ決め手は「音色作りのし易さ」という点ですが、ここは本当に滅法優れています。

小型軽量のプロセッサー比較

幅30cm弱で1.6kg。めちゃくちゃ重いわけではないですが、持ってみると意外にずしっと来ます。同じ小型軽量をウリにする機種はいくつかあり、

HOTONE Ampero / Ampero One
BOSS GT-1000 core
HOTONE Ampero II Stomp

この辺が対抗馬でしょうか。

BOSS GT-1000 Core(サウンドハウス)
HOTONE Ampero II Stomp (サウンドハウス)

MX5はエクスプレッションペダルが付いているところが強みですが、これに適合するのは初代Amperoの二機種。Oneはセンドリターンがなく3スイッチ、無印AmperoはMIDIも含め全部入りで4スイッチ。

MX5の入出力端子は小プラグのMIDI端子も含めほぼ揃っていますが、スイッチは3つ。価格はさすがに米国産のMX5がひときわ高いです。

BOSS GT-1000CORE、Ampero IIはいずれも3スイッチでペダルなし。その分さらに省スペース、軽量化を成しており、信号経路の柔軟性や搭載エフェクトやアンプモデルの数も上を行きます。ペダルがどうしても欲しかったら外付けのを付ければいいので、無くてもあんまり問題ないかもしれません。どちらも価格はMX5より1万円以上高いですが、マルチっぷりを取るならこちらでしょう。

アンプ

Headrushは日本で売る気がないのか、日本語のウェブサイトにはついこの前まで搭載モデル一覧がなかったですが、先ほど見てみると見れるようになっていました。

Headrush公式サイト MX5

フェンダー系が充実

フェンダー系が12種と充実。マーシャルもPlexiはやたら多く、JCM800は50Wと100Wが両方あったりして気が利いてます。ハイゲイン系は少なく、Mesa-Boogie Rectifier、Bogner Ecstacy、Peavey 5150ぐらい。メタル系に人気のEngl、Diezel、Hughes & Kettnerあたりのドイツ系がないので、ここいらを指向する人は考えた方が良いかも。

Fender Tweed Princeton

Marshall JCM-800 (50w)

Soldano SLO-100

※アンプの後に軽くディレイとリバーブをセット。IRはサードパーティー製を使ってて、JCM800については無料で落ちていたメサブギー系のものです。

こちらは僕が日頃練習で使っているサウンド。リードギター用として低音をタイトにしてます。Bogner Ecstacy RedチャンネルモデルにEQとディレイの組み合わせ。

特にきっちりしたIRを使うとその臨場感は生のアンプにひけをとらないイメージです。Kemperと比較してみましたが、劣っていない印象ですね。

内蔵のキャビネットIRはいまいち

サウンドハウスのGigboardレビューにもある通り、内蔵IRはなんだかシャリシャリしていまいちです。僕はML Sound LabのSureってモデル(Suhrです)のIRを入れて使っていますが、桁違いに良くなります。無料でもIRはいっぱいあるので、これを使うにはいくつか落としておくが吉。

どちらも同じアンプモデル(Soldano SLO-100)。上が内蔵のIR。下がML Sound Lab製品。

エフェクト

数は少ないがテープエコー、ブースターが○

エフェクトはモジュレーションの21はともかく、ディレイ・リバーブは12と数は少なめ。ただ、クオリティは高いですし、山のように用意されてて結局何を使うかわからんとなる人は多いと思われ(僕もそうです)、これぐらいの数が迷わず使えてちょうど良い気もします。

ギタリストにとって歪みの次に重要なディレイですが、テープエコーの出来は特に良く、アナログディレイもなかなか。リバーブもさすがにAvid社のエッセンスが入ってるだけあって高品質。反面シマーリバーブはいまいちでした。ブースターはRC Boosterを模したWhite Boostが秀逸です。

テープエコー(Tape Echo)モデル

リバーブ(Eleven Reverb)

シマーはあまりですが、残響にじわっとしたサウンドの乗るAmbience Reverbはなかなか良いです。こんな感じのふわっとした幻想系のサウンドも。

アコギもイケる

MX5をアコギで活用してる動画もいくつかYouTubeには上がってますが、アコギ用マイク録りのIRさえ手に入ればそれをキャビネットシミュレーターとして使う事で余裕でいけます。

こちらも拾いもののIRデータ。上がIRなしのピエゾのみ録音。下がIRをつかってのマイク録音シミュレーションです。どちらもディレイとリバーブが薄く掛かっています。

スタジオクオリティの空間系やルーパーも活用できるので、アコギのライブでも一台で済ませられるのは大きいです。

操作性と柔軟性

柔軟性

信号経路の柔軟性は他社製に勝っている印象はないですね。まぁデュアルアンプのステレオ出力程度なら余裕ですし、いちブロックに2つのアンプを同時に割り当てられるので、最大4つまで使えるという計算になります。必要かどうかは微妙ですが。ちなみに4コアなのでプロセッサー不足は感じません。

この大きさでセンドリターンがきっちりあるのもありがたいですね。

家での接続。赤白プラグの向こうにEX Pedalとセンドリターン。

サウンドメイクのし易さは屈指

リグをまとめたセットリスト機能やスナップショット機能など、切替機能はまあ不足ないでしょう。スイッチ3つは足りるか微妙ですが、ここは小型の宿命ですし、足りなかったら外付けで何とかできます。

プリセットを切り替えるRig Mode
内部のブロックを3個まで切り替えるStomp Mode
リグを右の二つのスイッチで、ブロックを左の一つで切り替えるHybrid Mode

音色作り、各リグのいじりやすさは僕が触った機種の中でも最高です。やはりタッチパネルは凄い。そのタッチパネルを利用してのUIも相当練られている印象で、パラメータやエフェクトを変更したいと思ったときに一瞬操作で迷うことがなくストレスを全く感じません。今どきPCやスマホの連動がないのですが、これは無くてもいいだろうという自信の表れとも言え、確かに必要ありません。PCで必死で作り込んだ音色がライブのリハで思ったようにならず、現場でセッティングし直そうにもやり方がわからん、と言った経験は誰しもあると思いますが、そういうことにはまずならなさそうです。

アナログのエフェクターを並べるように…と謳うマルチのほとんどが誇張である中、この機種は本当にその感覚です。サウンドメイクのし易さは他のどのモデルよりも上でしょう。ここは本当に素直に賛辞を送りたいです。

まとめ

MX5の最大の特徴は音作りのしやすさです。ここに価値を見いだせるなら他機種を差し置いてでも買いでしょう。反面、内蔵エフェクトの数などは他社のものに負けるので、色々入ってる方が良いという場合はやめた方が良いと思います。あとIRデータは後で用意した方が良いし、プリセットは結構大雑把です。自分で音を追い込むのが面倒くさいと思われる方もパスした方がいいでしょう。

「HEADRUSH MX5」をサウンドハウスで見る

その他にも操作性や要となる音色面、運搬性などは問題なく優れているので、マルチっぷりを取るか、触りやすさを取るか、それと価格との兼ね合いになると思います。僕は個人的に気に入っていて、エレキもアコギもこれメインでいこうかと思っています。