Native Instruments「Guitar Rig 5」詳細レビュー

先日KOMPLETEを導入した際にGuitar Rigが同梱されていましたんで、ちょっと使用感や使用方法の紹介を含めてレビューしてみます。

現在、店頭販売はKOMPLETEのみで、単体購入はNative Instruments公式サイトに頼ることになるようです。

 

理路整然としたユーザーインターフェイス

Overview。左側でアンプ、エフェクトを選び、右側に追加する。
Overview。左側でアンプ、エフェクトを選び、右側に追加する。

全体的な雰囲気としては、左側が各種コンポーネント、右側がラック。このウインドウ右側を全部使った「大ラック」に、再生デッキやチューナーなど、演奏の上で機能として必要な「小ラック」と、アンプやエフェクトなど音作りに必要な「コンポーネント」を並べていきます。

一見すると理路整然としていますが、音づくりと無関係なものも右側に全部混入されている上に、縦にずらーっと並んでいくので、見やすいかといえば微妙です。この辺りはギタリスト目線ではない、総合DAWソフトウェア会社の製品であることを感じさせるところ。

慣れたらどうということはないですが、ぱっと見でわかりやすいかって重要。特にいつまで経っても真空管やアナログのつまみが大好きな「ギタリスト」という人種にとってはなおさらのこと。ストンプボックスとラックエフェクターとアンプが完全に分離したAmplitubeはこれに比べると遙かにギタリスト的。この辺りはまたおいおいレビューしたいと思ってます。

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ちなみに、プリセットは山のようにあります。音作りの幅が広すぎるので、一度プリセットから試して、微調整するのも十分あり。ただ、数が多すぎて目当てのプリセットにたどり着くのが大変そう。一応、雰囲気ごととかでもカテゴリ分けはされてます。

 

エフェクト群は超多彩

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左側のコンポーネントも中身を開くと、ずらっとアンプやエフェクトが並びます。その多彩さは競合製品のAmplitubeを遙かに凌ぎます。

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特に目をひくのが、この歪み系エフェクトの豊富さと、リバーブの種類の多さ。

アンプの種類は他の製品と大差ない量ですし、大体使えるモデルがどうしても決まってくるのですが、このリバーブの多彩さはスゴイ。全部を完全に試したわけではないですが、かなり音的にもレベルの高いものが揃っている印象です。

エフェクトの数は同じ分野の製品の中でも1,2を争いますが、実際的には上述のリバーブなどを除けば、妙なアナログシンセ譲りのフィルターとか、何に使えと…と思わされるものも多数。特にカテゴリ”Modifier”と”Special FX”はキワモノが揃います。

これらのゲテモノエフェクター、自作曲などで巧く使えると面白いとは思いますが、相当に人を選びます。

 

使えるControl Room

上述のとおり、アンプはわりとよくあるモデルのぶんが網羅してある、というだけの印象ですが、音作りの上で重要なポジションを担いそうなのが、下記のキャビネット。

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キャビネットは2種類あり、ひとつがMatched Cabinetで、こちらはアンプを読み込んだときに最適なものを自動で選んで選択してくれるというもの。普通はこれでいいんですが、もうひとつ上の画像のようなControl Roomというものがありまして(”PRO”という、使うマイクまで指定できるものもある)、右側のアイコンのところでキャビネットを指定、そして複数マイクで集音したものをミックスしていって音を決めるというもの。オンマイク、オフマイク、エアーを自在に混ぜることができます。

これが相当に細かく作り込める機能を持っており、他のどのアプリやハードにも存在しない、非常に大きな特徴となってます。目的の音が自分の中で明確であれば、こういうものを使ってビシっと音を作り込んでいくと良いです。

 

再生・録音機能は普通

再生デッキは2箇所にあり、PREではGuitar Rigの音作りに入る前の信号、POSTは加工されたあとの信号を再生、録音できます。PREには何も挿さないか、録音された”素”のギターの音、POSTにバッキングトラックを挿してやると良いと思います。

音声ファイルのプレイリストを作成しておけない分やや不便。練習とかで複数のバッキングトラックを保持しておきたい人は多いと思いますので。その他、最近のマルチエフェクターには標準搭載されているルーパーなどもあります。

レコーダーは2箇所にある
レコーダーは2箇所にある

その他ライブで使うためのLIVEモードもあります。MIDIコントローラや別売りRIG KONTROLでマルチエフェクターのように使うための機能です。

ライブモード
ライブモード

 

音声信号のルーティングは柔軟

信号のルーティングの柔軟さははっきり言って普通のシミュレーターでは群を抜いてます。

前述のControl Roomはマイキング毎にパンを振ったり、位相まで変えられる柔軟ぶり。信号を二手にわけ、個別にパンを設定できる「SPLIT」、さらに周波数で区切って信号を分ける「CROSSOVER」、そのほか、失礼ながらはっきり言って使い方がよくわかっていないんですが(笑)「Container」(マニュアルを見ると、ver5で導入されたすごい新機能の模様)とか、信号を制御するだけの機能だけで3種類もあります。

その他、Master FXはプリセットの変更に干渉されない、トータルエフェクトとして利用できますね。

 

音をつくってみた

というわけで、実際に作ってみた音をご紹介。

トラックはステレオにして、前述のCROSSOVERを使い、LowとHighの2つの周波数帯域で信号を分割。

Lowチャンネル
Lowチャンネル
Highチャンネル
Highチャンネル

低域の方にはOrangeのアンプモデルを使い、気持ちブーストでゲインを上げています。高域の方はマーシャルJCM800のモデルにControl Roomを使用。ブースターとしてScreamerをかなり深めに掛けました。

Lowの方が比較的ローゲイン、Highの方がやや暴れ気味なサウンドを、下のフェーダーで混ぜ込みます。今回は若干High寄りなバランス。

その下
その下

その後、Tube Compressorを全体にやや薄めに掛けます。コンプはあまり良いのが無いですね。これも思ったほど気持ちよい掛かり方はしなかったです。最後にMaster FXラックにリバーブとディレイを。ディレイはピンポンにしてます。

そして、これが実際に弾いたもの。なぜこの曲かは謎ですが、なかなかかっこいい音が出てるんじゃないでしょうか。

 

まとめ

というわけで、長々とレビューしてきましたが、Guitar Rigの最大の長所は、やはり多彩な音色づくりができるところにあると感じます。音の善し悪しは、極論すればAmplitubeと大差ありません。とはいえ、Logicに付属のものよりはさすがに上を行きます。まぁ、安くない製品なので、そうでないと困るんですが。

Control Roomや多数のエフェクト群、ルーティング設定の種類を考えると、音色のエディット範囲はほぼ無限です。その分、のちにエフェクトを追加するということができないので、これ1つで完全に完成しているとも言えます。

 

このご時世なので、ソフトウェアのアンプシミュレーターはタダでも手に入ります。わざわざ金を出す価値があるかどうかはその人それぞれの判断。Guitar Rigは機能縮小のフリー版もあるので、興味のある方は一度落としてみると良いと思います。

ちなみに、ソフトウェアのアンプシミュレーターの中ではノイズが少ないのは大きなポイントです。最後になりましたが、付け加えておきます。