Native InstrumentsのKompleteは2014年秋でいよいよ10ですが、少し前に9を買ったとき、ドラム音源に”Studio Drummer”というのが入ってました。Ultimate版にはAbbey Roadなんたらというのも数種類入ってますが、無印版にはこれとAbbey Roadの60’sのみ。
この音源はかなりパワーのあるガレージ系の音が魅力なので、ロック系には特に合うんですが、音作りの幅もなかなか広いのです。Optionを除く各メニューをざっくり解説して、実際に使ってみた音源を載せて紹介します。
Kitメニュー
まず、Kontaktに呼び出した際に表示される画面がこれ。
上の “Session Kit – Full” はパッチを呼び出さなければ表示されないですが、このドラムの絵が配置されてるのは、4つあるメニューのうち”Kit”というメニューを選んでいる状態。メニューは下の水色の四角で囲ってある、タブ状になったものがそう。
この画面では各キットのチューニングやエンベロープの設定などを軽く行えます。
OH MIX、ROOM MIXでオーバーヘッド、ルームマイクへの混入具合を設定、TUNEで高低のチューニング、ATTACK、HOLD、DECAYで音の減衰具合などを設定できます。スネアのATTACKを右に振るとフラムみたいなサウンドが得られます。
Groovesメニュー
内蔵リズムパターンの一覧ブラウザです。ジャンルだけで11種類、さらにその中に数え切れないほど入っており、網羅は不可能じゃないかと思えるほど豊富。特にロック系はパワフルでかっこいいパターンが揃っており、フィルも派手なものが多いです。
ファンクはどっちかというとファンクロックみたいな感じ。下にあるVelocityのつまみを若干下げ気味にして、おとなしめのサウンドにしてやると割といけるかも。ジャズ系はダメでした。4ビートが全然無いじゃないか。
パターンが決まれば、ダブルクリックすると右上のGROOVESの小窓に表示されるので、そこからDAWソフト上にドラッグすることで貼り付けることができます。
Mixerメニュー・概観
この音源の最大のポイントになるのがこの部分です。
実際のドラム録音のマイキングに準じたミキサー画面が登場します。タムの右側はタンバリンにウッドブロック。こんなもんにまで独自のチャンネルを配している辺り、凝り過ぎの感も…。
右の色の濃い部分は、左から順にオーバーヘッドのステレオマイク、ルームアンビエンス用マイク、オーバーヘッドのモノラルマイク。この部分は上のBUSESというところを選ぶことで、マスターとリバーブのトラックを呼び出すことが出来ます。
一番左下、エフェクト類の左側にあるSETTINGSというタブで、マイキングやアウトプットの選択なんかができます。
一番左がマイキング。トラックによってはない場合もあり。真ん中がエフェクトのルーティング。順番を自由に入れ替えられます。一番右はトラックごとにアウトプットを選択するもの。DAW上でマルチトラックにパラアウトする場合に必要になる場所です。
Mixerメニュー・エフェクト
各トラックにはインサートエフェクトをかなり精細に掛けることができ、下半分を使ったエリアがまさにそれ。Transient Master、Solid Bus Comp、Tape Saturator、Solid G-EQという4種類はNI製品ではよく見かける高品位エフェクト。
セッティングのメモリが多少曖昧ですが、ドラムの音を作るためと割り切れば、このぐらいの方がかえって直感的に音を作れそうな気もします。
これらの4つは自由にオンオフ、並び替えが可能。右下にはFX PRESETという欄があり、プリセットが各トラックごとに何種類か入っているので、プリセットを選びながら気に入ったものを選択、というのも良さそう。
前述の通り、右上のBUSESを選択することでMASTERとREVERBのチャンネルを呼び出せます。さらにREVERBタブを選択すると、残響のタイプも選択可能。
各チャンネルごとにSENDを設定することでリバーブへの送り量を設定可能なので、この部分で掛ける、Kontaktの内部で掛ける、パラアウトしてDAW上で掛ける、とリバーブの掛け方にも3種類可能。
実際に使ってみる
まず、せっかくなので内蔵リズムパターンから1つ選んでみます。
これだけでも音色としても中々いけるんですが、全体的にやや重たいので少しいじってみます。
・EQで中低域をカット
・Transient Masterでやや透明感を出すように
・オーバーヘッドの高域をさらにブースト、中域をカット
・キックのチューニングを若干下げる
・リバーブをStudioにして、スネアとオーバーヘッドに少々
という処置をやってみたら、結構スッキリしたサウンドになりました。
これにベースとオルガン、さらにギターソロを録音して仕上げたのがこれ。
実際にはもう少しDAW上でコンプとかをしっかり掛けると、パワフルになるんですが、今回はそのままの素の音で。
個人的に長年愛用しているAddictive Drumsは派手めで、すでに作り込まれた音が魅力。これにはこれの良さがあるんですが、Studio Drummerはよりナチュラルな乾いた響きがしますね。音色はルーズな感じなのでイギリス系のロックとかに合いそうな気がします。J-POPには合わないかな。