2015年2月、次なる旅行の行き先を決める際に、物価と気候という、2つの要素を大まじめに考えました。
せっかく日本でもようやく冬が終わりつつあるこの時期に、また真冬のような寒い国に行くのも、少し気が乗らない。3月といえば北の方はまだ寒く、かといって南の島は個人的に興味がない。
再びヨーロッパにしようか、という話まではしたものの、ほとんどの国がまだまだ寒く、おまけに大体の国は日本以上の物価のせいで、滞在費がかかるのが難点。その中で2つの要素をうまい具合に満たしてくれる国はないものかと少し思案すると、ひとつの答えが出てきました。
ヨーロッパ最西端の国、ポルトガル。
経済状態があまりよくないというのもあってか、物価は他の西欧諸国に比べても安く、3月での最高気温は20℃にもなるこの国。しかも海鮮が豊富でメシが美味いときている。
よくよく調べてみると、ジェロニモス修道院、トマール修道院、谷間の真珠オビドス、欧州文化都市のギマランイス等々みどころも多く、何よりポルトガル観光局HPのポルトの写真にやられたというのもあって、これしかないでしょう、とリスボン行きのチケットを手配したのが2月の始め。
ただ、今回は日程的余裕が少なかったので、オビドスやトマール、東の端に位置する鷲の巣村マルヴァオンなどの候補地は泣く泣く外し、リスボン、ポルト、ギマランイスの3箇所に絞って回ることに。3月中旬の旅行はこうして決まったのでした。
ヨーロッパ旅行はたいがい朝早くの飛行機に乗って、その日の夜に着くような便を手配するのですが、今回は費用圧縮のため、夜出発のエミレーツ便を予約。これが非常にまずい選択でして、ドバイ経由でおよそフライト時間は20時間弱。リスボンに着いたときにはもうへろへろ。しかも、着くのは昼間なので、さすがにそのまま寝るというわけにもいかない。
ちなみに、飛行機からのリスボンの眺めは、海岸線との調和もあって、今まで見た諸都市の中でも一、二を争う美しさでした。
初日の宿はホテル・セッテ・コリーナスという地下鉄Anjos駅徒歩10秒の超駅チカなホテル。駅から遠いのはウィーンやリュブリャナで懲りたので、今回はどこも駅チカです。受付のおじさんは非常にダンディで良い感じの人、部屋もきれいで申し分ないホテルでした。荷物を置いてシャワーを浴びたら、すぐに軽く観光に行きます。
今では空港からリスボン中心地までは、地下鉄が通っていて、1本で行くこともできます。その地下鉄に乗る際に役に立つのがこのヴィヴァ・ヴィアジェンという読みにくい名前のカード。チャージ式のICカードで自動改札をくぐるという、日本と同じような感じの使い方ができます。
さてさて、Anjosを出たら数駅南に下り、Rossio駅まで。この駅は中心だけあって、かなり大勢降りていきます。
ロシオという語自体に広場という意味があるようですが、ガイドブックなどではロシオ広場と書かれます。ここはリスボンのど中心に位置する大きい広場で、真ん中にでっかい塔みたいなのがあり、その上にペドロⅣ世像が乗っかっています。着いたのは日曜の午後でしたが、ものすごい賑わい。
広場から南に伸びるアウグスタ通りを進んでいくと、アーチの向こうにコメルシオ広場という大きな公園に立つ像が見えます。その向こうには海のような広さのテージョ川。日本にはない広さの川です。
この日はそのままベレン地区のジェロニモス修道院に行こうと思っていました。
ベレン地区まではいくつかの選択肢がありますが、一番早く到着できる近郊鉄道を使うことにします。電車が発着するのはテージョ川に面したカイス・ド・ソドレ駅。ところが、ここまでぶらぶら時間を掛けて歩きすぎたせいで、入場五時までという時間に間に合わないことが判明し、あえなく次の機会にまわすことにしました。
結局下ってきた道を登り直します。途中で市電28番を発見したので、これ幸いと乗り込んでみます。ヴィヴァ・ヴィアジェンはこれにも使えるので、やはり便利。
リスボン中心を歩いていると、市電が結構な頻度で往来しますが、28番は半分観光客用みたいになっていて、窓から動画を撮っている人なんかを結構見かけます。他の市電は本数が少ないので、あんまり頻繁には見かけません。黄色い電車が坂道を登っていく様はまさにこれぞリスボンな景色。
内装はかなりクラシックな感じですが、奇をてらった感じではなく、実際にかなり昔に作られたもののようで、ブレーキなんか掛けるたびにガチャンゴトンと凄い音をたてます。
後日乗った15番はかなりモダンな車両だったことを考えると、28番はやはり観光客用にレトロなものをあえてそのまま動かしているのかもしれません。
坂を登って下って、リスボン東側に位置するアルファマ地区の目前、大聖堂の前で下車。
大聖堂は立派ではありますが、他の西欧諸国の首都にあるような馬鹿でかいものに比べると比較的ちんまりとしてます。内部もゴージャスはゴージャスですが、天上にまばゆいばかりのフレスコ画が描かれた巨大な教会に比べると、かなり地味目です。
その後、一旦西側に戻り、有名な「サンタ・ジュスタのエレベーター」に乗ります。
このエレベーターはエッフェルの弟子が作ったという話ですが、確かにエッフェル塔的な外観がクラシカルな建物の間ににょきっと顔を出している印象です。が、行った時はちょうど周りに足場が組まれており、外観をはっきり視認できませんでした。ひょっとしたらなんらかの工事中なのかも。
安くもないお金を払い乗り込んでいくと、内部は市電28番のようにレトロでクラシカル。こりゃ風情がありますなあ。
最上層の展望台は時間が遅かったせいか閉鎖されており、金網で囲まれたひとつ下の層までしか行けませんでした。が、その分、世にも美しいリスボンの夕景をこの目に収めることができました。カメラをなんとか金網の外に出しながら撮影開始。
地面を歩くのは楽しくても、高台に登って上から見ると案外美しさを感じない街というのは割とたくさんあります。
そんな中、リスボンの眺望は稀に見る美しさです。坂が織りなす重層的な街に統一感のある赤屋根、そのうえ向こうにはきらめく水面まである。美しい要素が見事に調和しているのを感じます。
そんなことを何となく感じながら、初日の夜は更けていくのでした。
日曜ではありましたが、リスボンのレストランは比較的どこも営業しており、晩ご飯の選択に困ることはさほどありませんでした。ファドを聴こうと思ってましたが、疲れもとれていないので、軽くパエリヤなんぞを食したらそのままホテルに戻って休みました。
次の日は北方、ポルトガル第2の都市ポルトへ向かいます。