ブリッジミュートを徹底的に掘り下げてみよう

ブリッジミュートは英語でパーム・ミュートと言い、特にエレキギターでは必須とも言えるテクニックです。ブリッジ付近に手を当てて弦の振動をコントロールするという単純なものですが、非常に奥が深いテクニックでもあります。

今回は色んな弾き方を紹介しつつ、徹底的に掘り下げて考えてみます。基本的すぎて見逃しているギタリストは多いので、自信がない方はこの先にGO!

基本的なやり方

右手小指側の側面(”小指球”というらしい…)をブリッジ付近に当てながらピッキングします。

手の小指側の側面

ギター側は厳密に言うと、ブリッジのサドルから弦が出てきてすぐの辺り。弦の振動を微妙に妨げながら演奏するためにここに手を置きます。

この辺りに当てる

ブリッジミュートは正面から見ると手が覆い被さって見えるため、なかなか視覚でレクチャーしにくいですが、ピックを弦から離して手を広げてみるとこんな感じです。

慣れてくると右手を左右に動かして掛かり具合も調整できます。ネック側に動かすときつく掛かり、ブリッジ側に動かすと浅くなっていきます。行きすぎると音が鳴らなくなったり、全く掛からなかったりするので、調整には十分な慣れが必要です。

 

シチュエーション別フレーズ例

さて、ここからはブリッジミュートを活かしたフレーズを紹介。リフが主ですが、ソロ向きのものもあります。譜例ではミュート部は「P.M.」と表記されています。

ブルースロック、オールディーズ系リフ

古くはチャック・ベリーの時代からあるこのスタイルのリフ。指を広げないといけないので意外に難しいです。

ブルースロック系の定番

ビートルズも受け継いでこのスタイルで弾いていますが、右手はミュートを掛けてることが多いです。こちらは交互にミュートを掛けたり解除したりを繰り返しているパターン。音源では一切ミュートを掛けていないものと一緒に弾いていますが、ノリの違いがわかるでしょうか。

Come Together風味

ハードロック、ヘヴィメタル系リフ

こちらは8分音符を主体としたハードロック系のバッキングパターン。

ハードロック系リフ

こちらはスピーディなメタル系パターン。右手が疲れる奴です。

スピードメタル風

さてさて、この手のリフではミュートのオンオフがかなり素早く出来ないといけません。というわけで、こんな感じのやり方を推奨。


ミュートを掛かっている状態から…


右手を少しだけ浮かせて弦から離す

これを交互にやりながら弾くようなイメージです。ピックの位置(青い丸)がずれると演奏に支障が出るので、ミュートしてようがしていまいがピックは全く動いていないところが重要です。

ミュート&アルペジオ

これはポリスのアンディ・サマーズ御用達のプレイ。

Every breath you take風味

応用編として付点8分ディレイなんか掛けるやり方もあります。

付点8分ディレイをセットで

まずディレイなしでこんな感じ。

ディレイを掛けると…

ミュートを掛けてのアルペジオは歪んだ音でやってもかっこいいです。ヴァン・ヘイレンの「Ain’t Talkin’ ‘bout Love」などで聴けますが、この手のプレイはやはりハードロック系でよく使われますね。

ミュート&単音カッティング

フュージョンやスムースジャズなんかで聴かれる、えらくお洒落なカッティング。脇役に徹して、パーカッシブな要素を前面にだしたものです。ロック系の人は一番やる機会の薄いもの。ちなみに僕もあまりやりません。

ミュートを使ってのカッティング

ギターだけだとよく分からないですが、オケに混ぜるとこんな感じです。

上のアルペジオの例でもそうですが、クリーントーンでミュートするときは歪んだ音の時よりも軽めにしておくのがポイント。音色によってミュートの加減も使い分けられると理想的ですね。

ギターソロで使う

こちらはテクニカルギタリスト御用達のマシンガンピッキング的プレイ。80’s〜90’sハードロックではかなり多用されました。高速ピッキングが要求されるので、演奏難度はかなり高いです。

低音弦マシンガンピッキング

フュージョン風味の16ビートソロ。パーカッシブな雰囲気が出るので、16分音符とは相性がいいようです。グレッグ・ハウ的な独特なスピード感が出ます。

ミュートをふんだんに使った長尺のソロ

 

歪んだ音でのノイズ処理にも

ディストーションが掛かっていると、ソロを1,2弦などで弾いていても、低音弦が共鳴して鳴り出すことはよくあります。また、チョーキングしたら上の弦を巻き込んでノイズがでることもしばしばです。フィンガリングで対策するのが最善ではありますが、ミュート状態を維持しながら弾くことで、低音弦の無駄なノイズを抑えられます。

難しいソロが多く、曲中ほとんどをハイゲインな音で弾くハードロック系ギタリストは、特にこれを一般的にやっているようです。リフで必須なので、いつでもどこでもすぐ使えるようにしなければならないのも、それに拍車を掛けています。低音弦でソロを弾く際にはミュートを一時的に外しています。

単音を弾くときは常にこの位置

僕自身も出身はハードロック系なので、これが右手のフォーム的に普通になっていて、単音やパワーコードの時は常にミュートが掛かる位置に右手を置いています。完全にフリーにしてぶらぶらさせているのはストローク、カッティングの時だけです。

弊害としては右手のピッキングがどうしても順アングル気味になってしまうことが挙げられます(親指が反る人は回避可)。また、クリーン〜クランチぐらいでしか弾かないという人は無理してやらなくて良いでしょう。

 

まとめ

パワーコードのリフとは特に相性が良く、ノリを全く変えることができますね。ソロで使っても、リズミカルにするのか、あるいは伸びやかにするのか、といったようなイメージをコントロールできます。基本的すぎていい加減にやっている人は多いようですし、自信がない人は今一度見直してみてはどうでしょうか。