ポール・マッカートニー&ウイングス名義でリリースされた初期のヒット曲。かつての愛妻であるリンダに向けて作られたバラードで、アルバムでは「Red Rose Speedway」の2曲目に位置し「Big Barn Bed」というオープニングの妙な曲が終わると(笑)、歌とともに鮮やかに始まります。
欧米では大変人気のある曲のようで、彼の曲ではイエスタデイに次ぐカバー数を誇るとかなんとか。日本ではすっかり懐メロ的な扱いなのが残念です。
Aメロ
出だしはIVmaj7から。イントロがなく歌からのスタートというのもあって、劇的な幕開けを感じさせますが、Imaj始まりでないのも関係しているでしょう。進行的には2段目真ん中がひとつのポイント。ベースが上昇する Am7 – Bbmaj7 – Bm7-5 は非常にメロディアスに聞こえますね。歌はBm7-5でもっとも高い音域に迫りますが、最高音がm7-5時に登場というのも珍しいパターンですし、m7-5で放り投げるこんなコード進行自体あまり耳にしたことがありません。何かの代理でもなさそうですが、少しも違和感がないのはさすが。
ちなみに11小節という妙な小節数。前のLondon Townの時にも書きましたが、なぜこれでスムーズに聞こえるのか謎です。ポールの曲はYesterdayを皮切りにこの手のが多いです。
Bメロ
出だしのGm7からC/Eの流れには、次のFに向かって鮮やかなベースの動きがあります。Cは働き的にはC7なので、単なるIIm7-V7進行なんですが、ベースの動きを絡めてC/Eとオンコードにしているところはメロディックさを助長していて、さすがのアレンジですね。3小節目のC7(9)はメロディが9thの音に掛かるので、(9)というコードネームにしています。
ソロギターで弾いてみる
手持ちの機材でのライン録音の実験を兼ねて、ソロギターでの演奏を録画。
アレンジは岡崎倫典氏のアレンジ本から拝借。以下の本に収録されています。
キーがGになっており、原曲より一音上げ。まぁ見事なアレンジです。キーがGってことで、メロディにハーモニクスを絡めたりもしてますし、印象的な間奏のギターソロを入れ込んだり、なかなか出来そうで出来ませんよ。上の動画のコメントにも、どこかの国の人から「Excellent arrangement」と書かれているものを発見できます。
まとめ
美しいバラードですが、「Let It Be」などとは違い、この曲ならではのコード進行が付いており、イエスタデイタイプとも言えるものです。とはいえ、この頃から増えてきたプログレみたいな独特の進行でもなく、あくまで曲の美しさが前面に出た嫌味の無いコード付けがなされています。この辺りが時代を超えて支持される理由でしょう。
アレンジについては、この後に流行り出すフュージョンやAORの雰囲気を先取りしたようなおしゃれさが感じられますが、これはエレピの多用によるものでしょう。
上のソロギターアレンジでも原曲のギターソロをそのまま入れ込んでますが、原曲のソロはこれ以上ないほどハマっています。昨今のライブでもほぼ変えずに同じ物を弾いてるので、「Maybe I’m Amazed」なんかと同じく、ソロと言うより曲の一部といった扱いなんでしょうね。