新ギターの注文先として選んだ、イタリア発のギター工房Valenti Guitars。こちらの記事でも触れていますが、現在イタリアの個人工房ではもっともホットなところじゃないでしょうか。去年の梅雨ごろの時期に注文し、当初年内ぐらいには出来そうな感じに見えていましたが、結局ワークショップの引越などもあったようで、遅れに遅れて先日届きました。約8〜9ヶ月ぐらい掛かった計算になります。
オーダーのきっかけ
僕はプレイスタイル的にはハードロック寄りの何でもプレイヤーでして、出音はモダンな方が好きでいながら、トレモロをよく使うし、ボリュームやPUも演奏中に頻繁に変えます。そして形状的にはダブルカッタウェイ、色は赤系という、譲りたくない条件がありました。
はじめデジマートなどで探していましたが、これに合うギターが非常に少なく、ある程度以上の価格帯になってくると大抵がヴィンテージの焼き直し、SSHの器用貧乏ギター、あとはPRS、Suhr、Ibanezって感じでした。PRSはかっこいいんですけど使用者が多すぎてあまり面白味がなく、Suhrは昔は良かったんですが、多売の方針になってからはあまり好きではない。この中ではIbanezは割と好みに合致するんですが、Ibanezに大金を出すならば一度外国の工房に注文しても面白いかもしれない、と考えたのがきっかけです。
個人的にヨーロッパは旅行でも頻繁に行っており愛着があるので、すぐにヨーロッパ産に決定。片っ端から調べると、オランダ、イタリア、スペイン、ポーランド辺りに工房が多いことが明らかになってきます。ここで調べ倒した成果は下の記事にまとめています。
Valenti Guitarsについて
イタリアのチッタ・ディ・カステロという田舎町にある工房。ルイージ・ヴァレンティという人が一人で作っており、最近ワークショップが引越を行い広くなったようです。僕が注文したオーソドックスなNebula、他にもメタル系のCallisto、ベースのAntaresなどのオリジナルモデルを中心にラインナップしてます。ピックアップも自分で作っているのは特筆すべき点で、できあがりを受け取った後での印象としては、このピックアップはかなりの品質と感じます。
生産は上限年間50本ぐらいとしており、#50以降は製作にCNCを利用しているとのこと。2022年2月より、なんと神田商会が代理店となり、日本に進出してくることが決定しました。普通の楽器店でNebulaが見れるのは、なんだか面白いです。
スペック
今回受け取ったギターのスペックです。
Body : Black Limba
Top:Flame Poplar (1pc)
Neck:Flame Maple
Fretboard:Ebony
Pickup:Valenti Skoll set
Bridge:Schaller vintage trem
Nut:Graphtech TUSQ
Frets:Jumbo Stainless Steel
他:コンパウンドラディアス指板、セットネック仕様、25インチスケール、Schallerロックペグ
取り立てて特別な材などを使っているということもなく、オーソドックスな仕様ですが、唯一個性的なところがあるとすればルックスでしょう。右肩の部分から黄色〜赤にフェードするこの色合いは僕が考えたのですが、元ネタはスペインのRamos Guitarsのギターです。僕が送った画像ではもう少しオレンジがかった色味だったんですが、できあがってみると赤が少し強くなりました。
そして、色以上に目を引くのがフレイムポプラの杢。ポプラはメイプルより軽いだろうと思って選んだだけだったんですが、想像以上に強烈でした。ぱっと見ほんまもんのフレイム(炎)です。僕自身としては炎のようでもありますが、夕陽と雲海のようなイメージですかね。
ちなみに、これは1ピースもので結構手に入りにくいらしく、Valenti初の1ピース・ポプラ・トップとのことです。
所感
音色、サウンド
音色はSuhrなどのモダンなギターに近いもので、僕自身の好みに大変合致しております。フェンダー系のシェイプに欲しい十分なブライトさを持ち、ローエンドも良く伸びており、全体として立体的なサウンドになっていて、今まで自分が弾いた中でも1,2を争うほど音の良いギターに仕上がっていました。注文のところに「ブライトなサウンドでかつ軽量」と付けたのでキンキンしないか心配でしたが、非常にうまく仕上げてくれたと思います。
この辺はピックアップの要素もあるでしょう。SkollセットはValentiのラインナップでも出力的に中間のレベルで、Hard Rock〜Metalとなっていますが、クリーンも非常に美しく、あらゆるジャンルで使える幅の広さを感じます。
取り回し、弾きやすさ
重いのがツラいので軽量にしてもらったんですが、こちらも概ね思った程度の重さになっており、前に使っていたSagoのストラトシェイプがかなり重かったことを差し引いても、軽い内に入るでしょう。これもハンドリングの良さに繋がっています。
ネックは思ったより太く、始めはどうかなと思いましたが、割とすぐ慣れました。ハイポジションはネックが太い割に非常に弾きやすく、コンパウンド指板の恩恵があるのかもしれません。ジョイントは19f付近かつセットネックで、24フレットもストレスなく弾けます。テクニカルなプレイも大丈夫でしょう。ただ、ネックが太いからか若干ヘッド落ちします。これはネックが重いのか、軽量を要求し、ボディが軽くなっているためなのかわかりません。どちらにせよ演奏上に支障を感じるほどではないです。
チューニングの安定性も今のところ十分ですね。変にずれたりすることはなく、ネックも概ね安定しており、アームを掛けても大丈夫。ただ、日本はこれから梅雨に入るので、ちょっと動くかもしれません。上の動画でルイージがネック内に仕込むカーボンファイバーへのこだわりを口にしていますが、これが良い働きをしているのかも。
まとめ
元々エレキギターのサウンドはアンプがほとんどであり、ギター本体に依る部分は少ないのですが、それでも「このギターでしか出ない音」みたいなのは絶対的に存在します。逆にギター本体をもってサウンドの傾向を決めるのが難しくもあるわけですが、非常にうまく体現してくれました。
今回は”90年代のジョン・ペトルーシ、近年ではアーロン・マーシャル”という具体的な候補を挙げて、ブライトかつスムーズな音を要望しました。その後のメールの返信もあっさりしたもので、正直どこまでかみ砕いて材を選定したのかわかりませんが、こうしてできあがったものが要望に沿うものであったということは、やはりそれなりに自信があったのでしょう。
Instagramでルイージ本人がこのギターを載せており、紹介には”super light and sounds beautifully”と付けていますが、全くその通りのサウンドです。素晴らしい仕事をしてくれたと思います。