最高のキャビネット・シミュレーター「Two notes Torpedo C.A.B. M+」実録レビュー!

先日Two notesのLe Leadを購入し、それを記事にしました。

今どきTwo Notes “Le Lead”を買ったのでレビュー

その際に同時に購入したのが、同じくTwo NotesのTorpedo C.A.B. M+キャビネットシミュレーター。

どんな機器なの?

キャビネット・シミュレーターは、アンプ・シミュレーターなどで作った音を、「実際のスピーカーから音を出し、かつそれをマイクで拾ったような音」に変えるもの。アンプ・シミュからの直接の音は、不自然で聴けたものではないので、それを自然にするものです。

普通はアンプ・シミュレーターには付属していて、マルチエフェクターにも立派なシミュレーターが付属しているし、ギター用のプリアンプなどにも結構おまけでついているので、この機能だけを持つ単体機はまあまあマニアックな存在です。

Two notesの規格”DynIR”

IRデータをマイクのポジションごとに数万種類記録し、それをソフト上でグラフィカルに切り替えられるようにしたDynIRがこの機種の目玉。大体の有料IRデータは収録マイクごとに膨大な数のファイルがパッケージされており、それらをすべて念入りに試しているとそれだけで人生が終わりかねんほどなので、いち機能としてGUIと連動して切り替えられるDynIRはなかなかに素晴らしい発想と思います。制作に死ぬほど時間掛かりそうやけど。

バーチャルでマイクをセッティングしながら音を探せるので、この手の作業が好きな人はこれだけでも随分楽しいでしょう。

心臓部でもあるマイキングの設定。

ちなみにハードを買わなくても、同社のTorpedo Wall of SoundがPC上でこれを行うソフトウェアです。ハードウェアのTorpedo C.A.B.シリーズはこれをハードで持ち運べるというもので、購入と同時に代表的なキャビネットモデルが付属してきます。ハードウェアならではの安定な動作やレイテンシーの無さもポイント。

What’s DynIR? (two-notes.com)

良かったところ

一週間みっちり使ってみたので、所感をば。

圧倒的な音質

やはりここですね。音質が抜群。Two Notesといえば、この分野とロードボックスを組み合わせた数々の製品類については大御所であり定番です。さすがのクオリティで、ちゃんとセッティングすれば信じられないほど素晴らしい音を出します。あくまでちゃんとセッティングすれば、ですよ。

パワーアンプシミュが結構良い

アンプシミュレーターでアンプヘッドをそのままシミュレートしているものであれば、内部にパワーアンプのシミュレートは入ってるでしょうが、単体でのプリアンプや、コンパクトエフェクターからのライン録音に挑む際にはパワーアンプを通した雰囲気が欲しく感じることが結構あります。この機能は真空管と動作方式から8種類を選び、ボリュームなどの値を選ぶ。
うまく掛けると箱鳴り感がしっかり出てなかなかいい感じです。かけすぎには注意。

プリ、パワーアンプセクション。プリアンプはFender Bassmanをモデリングしている

リバーブが高品質

最後段にリバーブが付いています。おまけかと思いきや、めちゃくちゃ作り込まれていて、ルーム、ホールから洞窟、教会、バスルームなど、モードがやたらと多く、音も高品質。

リバーブは種類も豊富

良くなかったところ

プリセットがクソ

この製品、ネットで調べていると、この部分でかなり評価を落としています。当機には音を加工するためのエンハンサーやEQ、プリアンプ機能など、キャビネット・シミュレーター以外にもいろんなものがついているんですが、プリセットはことごとくこれらが掛かりすぎています。その結果、不自然にペラペラした音や奥行きのない妙な音など、ぱっと使える音はほとんどない有様に。まじで何故これでOKを出したのか疑うレベルです。「ちゃんとセッティングすればいい音が出る」と念を押しているのはこれが原因です。もったいない。

数だけはあるんやけどね…

モノラル出力

立派なリバーブがついているのにモノラル出力。マイクも2本立てられることだし、ステレオでミックスできても良かったと思うんですが…。ちなみに、ヘッドフォンアウトだけはステレオ出力です。

Line OutとDI Outともにモノラル

12V電源

現場で非常に鬱陶しいのがこれ。Two NotesはLeシリーズもReVoltシリーズもみんな12Vで、もう何かに取り憑かれているんじゃないかというレベルで12Vにこだわってます。音を考えたときにこれがベストだったのかもしれんが、もうちょっと何とかならなかったのか。ライブの際には複数電源アダプターか12V対応のパワーサプライは覚悟。

12VDC 200mA

チューナーへのアクセスが悪い

地味〜ながら練習で非常に助かるオンボードのチューナー。アコギでライブする際になんかは特に有用なはずのチューナー。しかも精度もなかなか高い。そのチューナーへのアクセスが

menuボタン → 回して右に最後まで送る → 決定

という非常に分かりにくくアクセスしにくい場所にあります。せっかくの優れた機能も底に埋もれているせいで台無し。こんなんワンタッチで呼び出せるようにしとけよ…。

そこそこの価格

新品では3万円中盤というなかなかの価格。競合製品のMooer Radar、HOTONE Omni IRは2万円前後、tc electronicのImpulse IR Loaderも2.5万ぐらいなので、どう見てもこの製品だけ頭一つ抜けて高い。上記のような付随機能に魅力を見いだせるか、あるいはハイクオリティなDynIRを使いたいかどうかによって決まります。

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録音してみる

前回のLe Leadプリアンプの記事でも登場したIntervals”Touch and Go”の一節

本体のプリアンプを利用して、前段に歪みエフェクター(Mad Professor / Stone Grey Distortion)を繋いだもの

本体に直接イン。内蔵プリアンプだけを使って作ったジャズトーン。

買うべき人・やめたほうがいい人

買うべき人

外部プリアンプやエフェクターで宅録がしたい
→エフェクター+本体内蔵プリアンプはかなりGood
DynIRが使いたい
→ソフトでよければWall of Soundでも良いが
アコギのライブ
→リバーブやEQが大活躍します
音を作り込むのが好き
→キャビとマイキングの組み合わせは無限大

やめたほうがいい人

マルチエフェクターやギタープロセッサー利用
→そもそも別枠でキャビシミュを置く必要性を考えよう
有料IRを使う
→もっと安いのを選んだほうがいいでしょう
細かなセッティングが煩わしい
→プリセットが使えない分、試行錯誤が必須

まとめ

というわけで、かなりニッチな機器ですが、やはり噂に違わぬ素晴らしい音色ですっかり気に入りました。家でのレコーディングにPCのキャビシミュはどうにも肌に合わない部分を残していたので、これである程度解消できそうです…!