理論講座<スケール編4>色々なマイナー・スケール

いままではダイアトニック・スケールとモードの解説をしてきました。今回はそこに当てはまらない変わり種マイナー・スケールの仲間と、そこから派生するモードの紹介です。前章の「マイナー・ダイアトニック」とセットになる内容です。

Aハーモニック・マイナー・スケール

ナチュラル・マイナーの第7音を半音上げたもの。第7音はルートと半音つながりになり、導音の役割を果たすようになる、というのが派生の由来のようです。

響きはスパニッシュっぽいものになりますが、エレキギターをメインにしている人にとっては「イングヴェイのスケール」として何より有名。彼はこれとナチュラル・マイナー・スケールとを絶妙に組み合わせてあの独自の響きを作り出しています。ちなみに、第7音が半音上がることでV7にE7が登場するのが、このスケールにおける最大のキーポイント。

ハーモニック・マイナーから派生するモード

通常のダイアトニック・スケールでは7つのチャーチ・モード全ての紹介となりましたが、ハーモニック・マイナーと、下のメロディック・マイナーでは、割とよく使われるものに絞って紹介します。

ハーモニック・マイナーP5↓

Aハーモニック・マイナー・P5↓

正式名称はハーモニック・マイナー・パーフェクトフィフス・ビロウ(perfect 5th below)。ハーモニック・マイナー・スケールの第5音をルートにしたスケール。フリジアン・ドミナントとも。

「C→E7→Am」というようなコード進行で、E7部分においてAハーモニック・マイナーを弾くと、とてもきれいにマッチします。その時のコードのルート音”E”をルートとしてAハーモニック・マイナーを言い換えたのがこのスケール。大体の人は「E7の上でAハーモニック・マイナー」という覚え方をしていて、わざわざEをルートにして言い換える人は少ないと思います。名前も長いし。

ちなみに、バックにE7が鳴り続けている前でAハーモニック・マイナーを凄い速さで弾くのは、イングヴェイがよく使う手法。彼は自分の弾くスケールをフリジアンだと言い切っており、ハーモニック・マイナーとはあまり言いません。このスケールの別名が「フリジアン・ドミナント」であることを考えると、あながち間違っているわけでもないようです。

メロディック・マイナー

Aメロディック・マイナー・スケール

ハーモニック・マイナー・スケールから、さらに6つ目の音を半音上げたもの。結果的に3度以外は全てメジャー・スケールと同じになるのが特徴。それゆえ上昇はマイナー調に聞こえますが、下降すると途中までがメジャー・スケールと同じように聞こえてしまうため、下降の際は普通のナチュラル・マイナー・スケールを使うのが良いとされています。…が、このルールはクラシック外の世界ではあまり意識されていません。

メロディック・マイナー・スケールから派生するモード

メロディック・マイナーから派生するモードは、ジャズで滅法重要となるものが含まれます。ジャズ系を攻める方は教会旋法と同じように、それ単体で一つのスケールとして把握するのがいいでしょう。

リディアン♭7thスケール

Dリディアンb7th・スケール

メロディック・マイナーの第4音をルートにしたスケール。結果としてリディアンとミクソリディアンを足したような音列に。セカンダリー・ドミナント(コード進行編参照)などで登場するII7の際にこれを弾くともっとも有用ですが、独特な響きを嫌ってあまり使わない人もいます。m7th、9th、#11thの音をすべて含むため、裏コードとしてたまに登場する「○7(9,#11)」などのコードには最適です。

オルタード・スケール

メロディック・マイナーの第7音をルートとしたスケール。ジャズ以外ではほとんど見る機会がないですが、ジャズでは必須中の必須。

メジャー・スケールのルート以外の全ての音を半音ずつ落としたものになっており、Cオルタードは「ド・♭レ・♭ミ・♭ファ(♮ミ)・♭ソ・♭ラ・♭シ」。すべてのオルタード・テンションがこの中に含まれるので、E7(-9)のようなオルタード・テンション・コードの上で弾くと、ジャジーな響きが簡単に得られ、普通のナチュラル・テンションを持つG7(9)などの上に弾いても、独特のアウト感がこれまたジャズ的です。

簡単そうに書いていますが、実はこのスケールは覚えてそのまま上下するだけではあまりメロディックに聞こえません。このスケールが使われた、生きたフレーズを覚えておくことが大事です。

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