コード進行を解読して分析します。複雑な進行の上でソロを取ったり、曲を作ったりアレンジしたりするときにできておくと役に立ちます。難解なコード進行を解読できるぞ!という自己満足の充足のためにもLet’s Try!
ダイアトニック進行を分析
巷でよく聴くダイアトニック進行を少し紹介。ローマ数字表記とキーCでの表記を併記しています。
イチロクニーゴー
Imaj7 – VIm7 – IIm7 – V7
俗にイチロクニーゴーと呼ばれる進行。あらゆるロック・ポップス及びジャズでの定番進行です。有名な「ラスト・クリスマス」は一曲通してこれの繰り返しのみ。2小節目のAm7をA7に変えるようなアレンジ(セカンダリー・ドミナント)もよく出現します。
哀愁漂うIVmaj始まり
IVmaj7 – V7 – VIm7 – V7
サブドミナントのIVmajで開始すると、長調と短調をぼやけさせ、絶妙な哀愁感を出せます。こちらはロック系やアンビエント系音楽にも幅広く登場。進行は単純ですが、アレンジなどに凝ることで雰囲気をいくらでも作れます。
ポップスのサビ典型進行
IVmaj7 – V7 – IIIm7 – VIm7
上のものの発展系。サンプル音源はハードロック調ですが、J-POPを中心に往年のポップスやゲーム音楽まで幅広く登場します。古くはユーミン「卒業写真」、カーペンターズ「I Need To Be In Love」などなどに始まり、現在でも使われすぎて良くも悪くも予定調和的。チューリップ「サボテンの花」ではAm7がA7に、スピッツ「ロビンソン」ではEm7をE7に変化させ、メロディに合わせたセカンダリー・ドミナント的なアレンジがされています。冒頭を”F – G/F”とアレンジすることで、ベースラインを保つアレンジも常套手段。
「枯葉」進行
IIm7 – V7 – Imaj7 – IVmaj7 – VIIm7-5 – III7 – VIm7
シャンソンの名曲「Autumn Leaves(枯葉)」で有名で、ギターがむせび泣くゲイリー・ムーアの「Still Got The Blues」もほぼ同じ進行。最後のIII7(E7)はIIIm7が変化したもので、VIIm7-5(Bm7-5)とくっつくことでマイナーツーファイブを形成。サブドミナントに始まり、メジャーツーファイブを経て、マイナーツーファイブでラストに至るまで、ダイアトニック・コードがほぼ全て登場するので、ジャズの練習に使われやすいのもうなずけます。
カノン進行(ベースライン下降)
Imaj7 – Vmaj/VII – VIm7 – IIIm7/V – IVmaj7 – Imaj/III – IVmaj7 – Imaj7
俗にいう「カノン進行」。バロック期の作曲家ヨハン・パッヘルベルの「パッヘルベルのカノン」で聴けることからその名で呼ばれます。ここでは、ルート音をドシラソ…と下降させるために、分数コードを積極的に使用、さらにトップノートをソに保つため、Fmaj9などを織り込んで、少しアレンジしています。どこでも聴ける予定調和感まるだしの進行ですが、それだけにこれで作られた名曲は枚挙に暇がありません。
部分転調
部分転調は、曲のキーが一部分だけ変わっているという進行をすべてひっくるめての名称です。盛り上げるために最後のサビだけ半音上がっているようなアレンジが想像しやすいですが、セカンダリー・ドミナントやサブドミナント・マイナーも言うなれば部分転調の一種です。
ここでは数小節単位で転調が挟まるもの、あるいは転調したきり戻ってこないものを中心に解説です。
同主調転調
上の段はキーがAマイナー。下の段はAメジャーです。同じAのマイナーからメジャー・キーへと転調しているわけで、部分転調の代表例です(同主調転調)。最後のBm7はメロディック・マイナーから派生するコードにも登場。E7はAにもAmにも解決できるので、そこを軸に転調している感じですね。
ドミナント・モーションの挿入①
キーCメジャーで始まりますが、3小節目でCメジャーキーとは無関係なコードが登場。これは次の小節のFに向かうツーファイブの挿入で、ここからキーFメジャーへと転調。
その後は、F7を挟むことでBbmaj7へ向かうドミナント・モーションを形成。その後7,8小節目で元のキーに戻っています。最後のFmはサブドミナント・マイナー。Dm7はCでもFでも出てくる共通のコードなので、そこを軸に戻しているような印象ですね。
ドミナント・モーションの挿入②
2小節目の分数コードはAm7へのルート移動(G#→A)を考えてのもの。上段ラストのBb7をV7として2段目で唐突に転調。転調後のキーはCマイナーといってもEbメジャーといってもどちらでもいいですが、Ebmaj7をImaj7とした方が把握はしやすいです。Cマイナーと見るのならば、Cメジャー→Cマイナーの同主調転調になります。
最後のBb7はE7の裏コードか、キーCメジャーのサブドミナントマイナーFm6の同構成音コードとも(”様々なコードアレンジ”参照)。サブドミナントマイナーはV7の代わりをするので、Cへつなぐことができます。